04 萬年青 油煙一〇二(上海墨厰)
観葉植物である萬年青(おもと)は、徳川家康江戸入府の際に献上されたという故事があり、吉祥の植物として日本で珍重されて来たが、中国においても好まれていたものか、墨の図案として採用されている。「油煙一〇ニ」は元は「超貢煙」のことで、「五石漆煙」=「油煙一〇一」に次ぐ良質の煤と金箔などの材料を用いて作られると言う。今回用いたものは、茶色の箱に入った90年代あたりの製品。
磨墨した際の松鶴硯との相性は、当たりが少し固めで可もなく不可もなしといったところ。
試筆してみると、先に掲載した01倣古墨から03五石漆煙などのむやみやたらの黒さから、一段下がった黒さの感じになる。もっとも、これでも十分黒く、墨絵を描く際など重宝しそうなものだが、強烈な五石漆煙を知った日本の書家にとっては物足りないのか、いまいち人気がない。肌理に粗さがあり、煤の粒子が粗目であることは先行する各品と同様。清朝期の佳墨と一線を画するのは否めない。
表面:萬年青 上海墨厰角印
裏面:萬年青図
頂辺:油煙一〇二
尺寸:127×29×11mm