文房四宝だいすき帳 vol.6 猫毛は細い線を書くのに最適

墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。
書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。
大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。

墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。

vol.6 猫毛は細い線を書くのに最適

 前回は、柔らかい毛の代表的な存在として、羊毛を取り上げました。今回も、柔らかい毛を取り上げます。猫の毛です。別名は「玉毛」(たまげ)。

 猫毛が「玉毛」と呼ばれるようになった理由については、諸説あるようですが、田淵実夫『筆』(法政大学出版局)には、「猫毛の精選されたものの毛尖は墨汁を玉のように見事に保つので特に「玉毛」と呼んで珍重されており……」と書かれています。

 猫毛は、羊毛と同じように柔らかい毛に分類されますが、羊毛よりも弾力があります。また、羊毛ほどではありませんが、墨含みもよく、そして、よく毛が締まり、集合力があります。精緻な細い線を書くのにすぐれていて、蒔絵師が漆で蒔絵を描くときの筆には、猫毛が使用されています。

 筆に使用する猫毛は、胴体や尾から取りますが、筆に適した毛は、一匹の猫からそう多くは取れないようです。肩から背筋にかけて取れる「走り毛」と呼ばれる毛が、最上級の品質です。

 ところで、游墨舎の “書道猫” の名前は「たま」。「たま」という猫の名前は、日本ではいわば定番。なぜ「たま」が多いのか、その理由も諸説あるようですが(気になる方は検索してみてください)、游墨舎の「たま」の場合は、「玉毛」の「玉」に由来しているのかもしれません。

仮名用の玉毛筆。左は、臨書筆「本阿弥切」。
中央は、一休園製「極品 初霜 大」(5mm×28mm)。
右は、「赤玉毛 中」(5.5mm×29mm)。
猫毛は、細くて、柔らかい。
毛先のまとまりもよく、独特の粘りもあり、細い線を書くのに最適。

(協力・写真提供/栄豊齋)

◉商品のお問い合わせ
栄豊齋(電話 03-3258-9088)

◉参考文献
田淵実夫『筆』(ものと人間の文化史30、法政大学出版会、1978年)
植村和堂『筆・墨・硯・紙』(増補版、理工学社、1987年)

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