残笏居 隅神帖 墨色比較15種 14 香璧 神烟(鈴木梅仙)

15種の墨の墨色を比較する連載「残笏居 隅神帖」
今回の墨は、どんな墨色でしょうか?

15種類の墨の墨色を比較する連載「残笏居 隅神帖」。今回の墨は、どんな墨色でしょうか?

14 香璧 神烟(鈴木梅仙)

 明治から大正にかけて、一世を風靡した仿古園鈴木梅仙の製品。香璧は、近代日本画の先駆者である橋本雅邦が愛用し、現在静嘉堂文庫が所蔵するその代表作の龍虎屏風を描いた墨として知られている。
 磨墨した際の松鶴硯との相性は、あまり良い磨り味ではない。何より粉っぽく01の倣古墨並み。およそ百年を経た松煙墨の劣化した故か。
 試筆してみると、べったりと黒さ引き立ち紙上で留まる故に、03五石漆煙の鉄斎より出っ張った感じに見える。油煙の紫光ではなく松煙特有の青味を帯びて、和紙や絹本などに書けば人目だけは引くのやも知れぬ。梅仙は自身の製品を、明墨を継承し更に改良したと豪語したが、継承どころか全く異質のものと言えよう。見つめていると、心が落ち着くというより、ざわつく。あるいは、五石漆煙の登場というのは、梅仙墨の流行が背景としてあったのかもしれない。そんなことを想起させてくれる。
 なお、後日知ったが、梅仙自身は香璧を「油煙の細」と語っている。

表面:香璧
裏面:梅仙造
頂辺:神烟
尺寸:90×12×11mm

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