文房四宝だいすき帳 vol.4 馬毛は大筆に多く使用されて大活躍

墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。
書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。
大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。

墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。

vol.4 馬毛は大筆に多く使用されて大活躍

 前回、剛毛の代表的な例として、山馬(さんば)の毛を取り上げました。山馬は「馬」という字が使われていますが、実のところは鹿の一種で、馬ではありませんでした。が、今回、取り上げたいのは、正真正銘の馬毛のこと。

 馬は、ほぼ全身の毛が筆の原毛として使用されます。胴や腹の毛は柔らかく、尾の毛は剛毛で弾力があります。尾毛については、「天尾」(あまお)や「尾脇」(おわき)という言い方があります。尾毛のうち、付け根のあたりの毛のことです。これに対して、尾毛の長い部分は「本毛」(ほんげ)などの名称で呼ばれます。

 田淵実夫『筆』(法政大学出版局)から引用すると、《尾毛は「天尾」と言い、天尾の中で尾鉢の周囲に短かく生えている毛を「尾脇」とか「尾まわり」とかいってその尾先は好んで芯毛や衣毛に使われる。天尾の尾先を切り取ったあとの毛は「ふり」という。毛の練りまぜの際、適寸に切って腰を強めるため振りこむので「ふり」というのである》。

 ここでの説明によれば、「尾脇」は「天尾」の一部、「尾脇」も大まかに見れば「天尾」ということになりそうです。このことと関係しているかはわかりませんが、言葉遣いとして、「天尾」と「尾脇」を特に区別しない場合もあるようです。

 長い毛が得られる馬毛は、多くの場合、大筆に使用されています。馬毛と、羊毛などの他の動物の毛を配合した兼毫筆も多く見られます。また逆に、下腹部、内腿などの産毛は、毛先が整い、集合力もあり、小筆の命毛(最先端部)に使用されることも。

馬毛と羊毛の兼毫筆。豊橋製「黒天兼毫」3号(11mm×58mm)。
黒色の天尾を筆の芯毛に使用。
きれいな線質で、九成宮醴泉銘などの楷書から、行草まで。
馬毛と灰リス毛の兼毫筆。豊橋製「麗筆」。
左から、別製(11mm×45mm)、大(8.5mm×40mm)、小(7mm×38mm)。
鋭い線を出すことができて、仮名条幅などにも最適。

(協力・写真提供/栄豊齋)

◉商品のお問い合わせ
栄豊齋(電話 03-3258-9088)

◉参考文献
田淵実夫『筆』(ものと人間の文化史30、法政大学出版会、1978年)

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