09 鑑真渡東図 特製油煙(上海墨厰)
文化大革命後の1978年から上海墨厰は、油煙一〇一をベースに麝香や金箔等貴重な材料を増量、頂級の広膠を加えて今までで最高品質の墨を作り始めた。それを「特製油煙」という。この材料を使った墨は、「老子出関」や「墨家者」など様々あるが、ここでは「鑑真渡東」を用いる。なお、1980年唐招提寺の鑑真座像が中国を巡回した際の記念墨「鑑真渡東」は、「油煙一〇一」で作られていることを付記しておく。
磨墨した際の松鶴硯との相性は、硯に対して墨が大きすぎることもあり、やや当たりが硬くて滑り気味で磨り味が悪い。
試筆してみると、07や08の鉄斎墨よりさらに黒味が出にくい。しかし見つめていると、肌理細かで濁りが少なく冴えた感じが伴う。おそらく煤の段階で相当留意した故だろう。その分、発色しにくいものとなったのだろうが、ある意味古墨に通じるものがある。こういう質の墨には、今回使っている硯や羅紋宣よりも、上質のものを用いる方が良かろう。
表面:鑑真渡東図
裏面:豪気……
側面:徽歙曹素功堯千氏
頂辺:特製油煙
尺寸:110×56×15mm