12 残墨(汪節庵)
残墨の欠片なのだが、かつて上部には汪節庵の名があった。歙県の函璞斎汪節庵は、清朝四大墨匠のひとつで、道光年間まで名を馳せた。用いるものは、おそらく嘉慶から道光あたりの製品だろう。
磨墨した際の松鶴硯との相性は、古墨特有の緻密さがあって、可もなく不可もなく。11民生在勤と大差ない。
試筆してみると、11同様の肌理の微細さがありながら、発色は遥かに強い。しかも、よくよく見ると、02から06あたりの単に黒いというよりは、濁りの無い爽快感のようなものが伴う。清朝期の古墨の佳品の力と言うものを示してくれるだが、やはり、紙の質が役不足で、本来の色にはなりきっていない。
表面:……心
裏面:……郷妙一世
側面:……製
尺寸:25×16×8mm