10 萬壽無彊
おそらく戦前、中華民国あたりの萬壽無彊だろう。残墨故に墨匠銘が認められないが、曹素功の堯千や敦記あたりのものではないか。「五石漆煙」に席巻される前の一般的な唐墨といったところか。
磨墨した際の松鶴硯との相性は、古いだけあって硬めの当たりで、可もなく不可もなくといった感じ。
試筆してみると、07の鉄斎よりほんの少し濃淡がついた上で強い。ただし、02から06当たりの黒々としたものとは異なる。肌理もそれらのものの持つ粗々しさとは異なるのだから、当然と言えば当然だろう。採煤の段階で違いがあり、けっして上質とは言えないものの古墨の端くれに含まれる一般的墨といったところか。
表面:萬壽……
裏面:龍図
頂辺:貢煙
尺寸:44×23×10mm