書業55周年 三宅相舟の今
会期 2023年7月20日〜30日
会場 東京・セイコーハウス銀座ホール(旧和光ホール)
現代かなの旗手のひとり、三宅相舟が書業55周年という節目に、9年前に急逝した妻や家族への思いも込めた個展「書業55年 三宅相舟の今」を開いた。
広島県福山市生まれの三宅は若き日、同郷の縁もあった桑田笹舟に教えをこい、好きだった関戸本古今集など多くの古典を書き込んで、早くから桑田門で頭角を現わした。
かなの能書である笹舟が戦後、急速に広まった大字かなの先駆者のひとりとなり、一方で料紙などの研究も熱心だったことが、三宅の書道人生にも少なからず影響を及ぼしているようだ。
三宅も漢字とかなのバランスに腐心し、漢字を多用しながらも、流れを大切にした情緒的な構成を目指してきたように映る。料紙は書家でもあった妻とふたりで研究、自作するほどだった。
さて、今回の個展。題材の多くは、先に逝った妻への思いもこもった万葉集の相聞歌を取り上げていた。ほかに枕草子などよく知られたものを書した。平安の文化に親しんでもらいたかったという。
会場作りは、大作は置かなかったものの、アクセントになる屛風を随所に配置し、色彩感覚豊かな額や軸をゆったりと展示。照明も落ち着いた明るさにして、公募展の白黒展開とは異なる「平安の雅」志向が色濃く表れていた。
作品は運筆や造形だけでなく、料紙や表装も1点1点歌に合わせて変化をつけていた。聞けば、亡き妻が創った料紙も数点使っており、屛風は自ら制作したという。「この国にしかない仮名の品格美と、みやびた平安文化の今様を再現し、後の世に繋ぎ残したかった」。
愛妻家として知られた三宅の夫婦二人三脚展。来年は大河ドラマで紫式部が取り上げられるようだが、平安文化の予習の一助という視点で眺めても興趣が深まるのではないかと思った。
(書道ジャーナリスト・西村修一)
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