2022 夏の個展 ピックアップ③ 金敷駸房エキシビション

金敷駸房エキシビション
会期 2022年9月8日~14日
会場 Bunkamura ギャラリー

自作の前に立つ金敷駸房氏

 石飛博光門下で、日展、毎日書道展、創玄書道展などで活躍してきた金敷駸房氏が、50歳を前にして書壇を離れ、フリーのアーティストとして立つことを決心した。本展はその心意気を示す個展で、約80作品を発表。渋谷Bunkamuraという少々とんがった空間で、書をどのようにアピールできるのだろうか。
 エントランスには書の展覧会らしからぬオシャレなデザインの大きなポスター。会場はやや小さめのスペースと広々としたメインのスペースに分かれる。小さめのスペースには、木片を利用した作品や、額装の小品がずらりと並ぶ。その隣がメインとなるスペースで、大作が多い。ほとんどが白い紙に濃淡様々な墨色で書かれた作品に、白基調の表具がされている。そのため白い壁をバックに、墨文字だけがせり出してくるような錯覚にもなる。もともと金敷氏は筆達者な人であるが、今回その達者具合をうまくコントロールして、大人のモノトーンの世界を静かに立ち上がらせることに成功したようだ。
 会場のあちこちに、ちょっとした遊び、たとえばドラム缶をディスプレイしたりとか、が仕掛けられているのは、神田昇和氏(エディトリアルデザイナー)によるもの。ポスターデザインも神田氏の手になる。作家は作品を書くことを主とし、その作品の魅力を際立たせるための仕事をするプロがいる。これもアーティストの一つの「仕事」の形なのだろう。書壇の枠を離れれば、一般の人が主な鑑賞者となる。通りがかりの人を会場に誘う仕掛けは多いに越したことはない。人生100年時代の後半戦、まずは上々のスタートといえよう。

(f)

小品がずらりと並ぶ
作品がパネル張りされ、モノトーンの静謐な空間を作っている
ガラス張りの会場を外から見る。色違いのドラム缶が目を引く。中にも作品が
ロビーを挟んで見える大作も金敷氏の作品
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