02 大好山水 五石漆煙(曹素功堯千)
大好山水は、日本人にもお馴染みの唐墨で、西川寧や富岡鉄斎など愛用者も多くいる。もともとは「超貢煙」だったはずなのだが、いつしか「五石漆煙」となり「油煙一〇一」へと継承されていった。その経緯はよくわからない。「漆煙」は油煙墨でありながら、濃墨は松煙の黒さを持つと言われる。ある時期から何故だか最高級のものをそう呼ぶようになったので、その影響か?
磨墨した際の松鶴硯との相性は、磨り口が前所有者によって山状にされている故か、少し硬めの当りといった感じで、悪くはないが良くもない。
試筆してみると、漆煙の名前通り黒味が強く出る。ある意味唐墨の中では異質なほどに黒い為、かえって黒さを追う近代以降の日本の書家に愛用されたのだろう。ただし、よくよく見れば、肌理に粗さがあって、用いられた煤の粒子が粗目であることがわかる。それは、清朝期の古い佳墨とは異なる点であり、長く見つめていると少々濁りが見て取れて下卑た感じを受けることへと繋がる。
表面:大好山水 徽州……
裏面:春到人間…… 山水図
側面:徽歙曹素功堯千氏選煙
頂辺:五石漆煙
尺寸:86×31×12mm