西村修一のShodo見て歩き vol.18 全国代表書作家展

全国代表書作家展
会期 2025年12月13日~28日
会場 鳥取県立美術館

 現代書壇の第一線書家が参集した「全国代表書作家展」が2025年12月、鳥取県倉吉市の鳥取県立美術館で開かれた。書分野の文化勲章受章者全8人(西川寧、金子鷗亭、青山杉雨、村上三島、杉岡華邨、小林斗盦、高木聖鶴、井茂圭洞)をはじめ、文化功労者7人(鈴木翠軒、手島右卿、日比野五鳳、日比野光鳳、尾崎邑鵬、黒田賢一、髙木聖雨)、日本芸術院賞と毎日芸術賞受賞者15人など全国から120人の錚々たる実力者の作品が顔をそろえる、公立美術館としては全国初といえる現代書の祭典となった。

西川寧「幽憂」

 この作家展は、2025年3月に同美術館が開館したのを記念して、鳥取県書道連合会(柴山抱海会長)が立案、主催した。これほどの作品を集めるにあたっては、柴山会長と名越蒼竹副会長が二人三脚で取り組み、書のユネスコ無形文化遺産登録を目指す全国書美術振興会、日本書道文化協会の全面協力を得ることで開催にこぎつけたという。同展終了後は、他館収蔵品を除く計118点が寄贈されるというから、同美術館は貴重な現代書コレクションを有する収蔵館となる。

金子鷗亭「若山牧水歌」

 さて、館内を歩いてみよう。まずは文化勲章受章者のコーナーへ。現代書の父、比田井天来門の金子鷗亭の作品は若山牧水の「山ざくら」を実に優しく、ゆったりとした筆致で、美しく整った詩文書作品に仕立てたものだった。

青山杉雨「黒白浪跡」

 青山杉雨の作品は、金文調の特徴的な運筆による「黒白浪跡」である。古典を感じさせる作品も多い中で、ある種、モダンな空気を醸し出していた。青山の師にあたる西川寧の作も、豊潤な線質の「幽憂」2文字で、強い存在感を放っている。高木聖鶴、杉岡華邨らかな作家の作品は、大字かなの理想形態とも思える爽やかな筆捌きと構成で、気品溢れる佇まいをみせていた。

高木聖鶴「山さとは……」

 文化功労者のコーナーでは、「翠軒流」で知られる鈴木翠軒の七言二句、天来門の手島右卿は淡墨の少字数書「歩」、日比野五鳳は小林一茶句など、往時を忍ばせる名品が出陳されていた。

手島右卿「歩」
日比野五鳳「小林一茶句」

 日本芸術院賞と毎日芸術賞受賞者のコーナーでも、現代書の最高峰として見逃せない作品が壁面を飾っていた。中でも榎倉香邨による若山牧水の短歌と中野北溟の三枝昂之の詞は、料紙に食い込むような生命感溢れる筆線が印象的で、思わず見入ってしまう。さらに新井光風、星弘道の漢字、石飛博光、船本芳雲の詩文書、土橋靖子、下谷洋子のかな、仲川恭司の少字数書など、それぞれの「書人らしさ」が浮き彫りとなった優作がそろっていた。

左から、仲川恭司、中野北溟、榎倉香邨、新井光風、石飛博光らの作品
柴山抱海(鳥取県書道連合会会長)

 また、全国代表作家部門に出陳している作家名は紙幅の都合上、ここでは紹介しきれないが、いずれも現代の書壇の第一線で活躍している書人ばかりで、すべてをじっくり鑑賞するには大分の時間と体力が求められるほどだった。
 もちろん、冒頭で紹介したように、これらの貴重な作品群は、同館に収蔵されることが決まっている。柴山は「これほどの規模の作品は県民の貴重な財産といえる。これから、鳥取の書文化振興のみならず、日本の現代書の普及発展に繋げて欲しい」と語っていた。今後、同美術館などでの常設展示や内外での企画展の開催、近現代の書の研究調査など、再び活用される機会が設けられることを大いに期待したい。

名越蒼竹(鳥取県書道連合会副会長)

(書道ジャーナリスト 西村修一)

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