現在の高校では、どのような書道教育が行われているのでしょうか。
授業では? 課外活動では? 他教科との連携? 地域との連携?
複数の執筆者によるリレー連載の形式により、
「高校の書道教育の現在」を浮き彫りにしていきます。
現在の高校では、どのような書道教育が行われているのでしょうか。授業では? 課外活動では? 他教科との連携? 地域との連携? 複数の執筆者によるリレー連載の形式により、「高校の書道教育の現在」を浮き彫りに。
第4回は、前回、レポートを掲載した
全日本高等学校書道教育研究会の川崎特別大会(2024年8月開催)より、
授業の計画・設計に関わる発表をご紹介します。
たとえば、王羲之の「蘭亭序」を生徒たちが学ぶとき、
先生方には、どのような授業の実践が求められているのでしょうか。
第4回は、前回、レポートを掲載した全日本高等学校書道教育研究会の川崎特別大会(2024年8月開催)より、授業の計画・設計に関わる発表をご紹介します。たとえば、王羲之の「蘭亭序」を生徒たちが学ぶとき、先生方には、どのような授業の実践が求められているのでしょうか。
第4回
新しい教育課程に対応したこれからの高等学校芸術科書道教育
─「活用力」から「応用力」、そして「探究力」へ ─
文/加藤眞太朗(愛知県立松蔭高等学校)
本拙稿は、第49回全日本高等学校書道教育研究会川崎特別大会にて発表した内容の概要となります。
・当日の発表動画(YouTube)はこちらからご覧いただけます。
・当日の配付資料(川崎特別大会 公開資料)はこちらからダウンロードできます。
詳細はこれらをご参照いただきたいと考えていますので、ここでは発表内容の項目・要旨を抜粋して紹介させていただきます。
1.はじめに
新しい学習指導要領に基づく授業が実施されるようになって3年目を迎えるが、これまで、「主体的・対話的で深い学びの視点に立った授業改善」や、「指導と評価の一体化」等、教育課題に対する様々なキーワードが挙げられており、これらを踏まえた実践が求められている。現在、これらをどのように授業に取り入れて実践していくかが問題となっている。そして、これまでの授業に照らし合わせた際に、何を変えるべきで、何を変えなくてもよいのかということに悩むことが多い。こうしたことに対して改めて考えることで、今後の芸術科書道の授業改善や授業の在り方・考え方について見直していきたい。
2.芸術科書道における「逆向き設計」
(1)芸術科書道における一般的な授業の流れ
(2)「逆向き設計」とは

「逆向き設計」とは、奥村好美・西岡加名恵(2020)が「育てたい学力・資質・能力を保証するための計画を、意図的に設計することであり、『育てたい子供たちの姿を実現する可能性を高めるために何を考えるべきかという “枠組み”』のことである」とする。
3.求められている結果を明確にする
(1)「相互鑑賞」の位置付けの明確化
ア 学習指導要領の確認
イ 「本質的な問い」と「永続的理解」
ウ 「教科・科目の本質に迫る問い」
(2)「創作」の位置付けの明確化
ア 「思考・判断・表現」の評価
イ 「主体的に学習に取り組む態度」の評価
ウ 「知識・技能」の評価
エ ワークシート活用時の課題
(3)「創作活動」ワークシートの作成



4.学習経験と指導を計画する
(1)「探究的な学び」とは
(2)「個別最適な学び」とは
(3)「創作活動」ワークシートの活用
(4)その他の活用



5.テキストマイニング
(1)テキストマイニング(ユーザーローカルAIテキストマイニング)の活用
(2)生成AIの活用

(https://wordcloud.userlocal.jp/)
【発表動画】
「書道Ⅰにおける知的財産権に配慮した鑑賞の授業」
(令和4年度芸術系教科等担当教員等全国研修会)
6.学習計画の作成
7.まとめ

「逆向き設計」という考え方を取り入れながら、「生涯永続的に探究する力」を育成するために、「相互鑑賞」において「教科・科目の本質に迫る問い」を設定する。それをもとに、「創作」では「単元の中で考えさせる問い」として「パフォーマンス課題」を設定した。次に、「承認できる証拠」としてワークシートを作成する。生徒の「学習経験と指導」を対応させて、「探究的な学び」と「個別最適な学び」の考えを取り入れつつ、ICT(情報通信技術)を活用して作成した。さらに、「探究的な学び」と「個別最適な学び」の考えを取り入れることで、生徒の自己決定力を育成することに繋がるよう、評価場面や学習活動の内容を配置して単元を設定した。
このように、書道の学習を通して「育成したい資質・能力」、つまり「期待する生徒像」を具体的にイメージしながら、授業を計画し、実践していくことが、今の教師に求められているのではないかと考える。さらに、評価の結果から指導が適切であったかどうかを見直すことが「指導と評価の一体化」が目指すことではないかと考える。
こうしたことを踏まえて授業を計画し、実践していくことが「逆向き設計」なのだと考える。そう考えると、これまで多く行われてきている一般的な授業の流れを大きく変えることなく、現在求められている課題に十分対応していけると考えている。しかし、その学習内容やパフォーマンス課題が、対象となる生徒に対して、適切に位置付けられているかについては、常に見直していく必要があると考える。
学校によって目指す生徒像は違い、地域から求められる学校の役割も違うため、学習指導要領の趣旨を踏まえつつ、生徒や学校の実態に合わせ、いかに生徒が取り組んでみようと思えるようなパフォーマンス課題を作れるかが教師に求められている役割なのだろうと考える。そのため、学校や生徒によってパフォーマンス課題は変わるべきであるし、どの学校にも通用するような汎用的なパフォーマンス課題は存在せず、指導と評価の一体化の中で常に見直すべき部分がここにあると考えている。
8.終わりに
非認知能力を軸に、資質・個性を可視化して育成支援する「EdvPath」を活用したいとも考えている。これは、「令和の日本型学校教育」の答申にもあるように、生徒が自らの状況を様々なデータも活用しながら把握し、自らに合った学習の進め方を考えることができるようにしていくためのものである。