墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。
書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。
大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。
墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。
vol.16 和墨と唐墨
今回は、前々回からスタートした墨の話題に戻り、和墨と唐墨について考えてみます。それぞれの字が示す通り、和墨は日本の墨、唐墨は中国の墨ですが、特徴に違いがあります。
なにより、使用されている膠(にかわ)の性質が違います。和墨に使われている膠のほうが、唐墨に使われている膠よりも力が強い(粘度が高く、粘り気が強い)のです。そのため、煤(すす)と膠の配合の比率を考えたときに、唐墨のほうが和墨よりも膠の量が多くなっています。唐墨の膠は力が弱いので、より多くの膠を配合する必要があるからです。具体的には、和墨における煤と膠の比率は、煤を10としたときに、膠は6〜8。これに対して、唐墨では、煤を10としたときに、膠は10〜12。このような比率になっています。
以上のような膠の特徴や煤と膠の配合比率が、和墨と唐墨のそれぞれの特徴を形成する要因として、特に大きな影響を与えているようです。
まず、和墨は煤の割合が多いため、墨がおりやすく、逆に唐墨は、膠の割合が多いため、墨がなかなかおりず、黒くなりません。そして、和墨は、滲みにくく、唐墨よりも伸びがありません。が、墨色は唐墨よりも重厚で、また淡墨も透明感があります。唐墨は、よく滲み、よく伸び、墨色はやや茶色で、和墨よりも柔らかみがあります。
なお、寿命については、唐墨のほうが、和墨よりも長いとされています。実際に中国の明清代の名墨は、古墨として長い寿命を保っています。ただし、現在の墨について比較すると、和墨のほうがはるかに品質はよいようです。和墨は、唐墨よりも硬く、割れにくく、逆に唐墨は比較的柔らかく、割れやすくなっています。
(協力・写真提供/栄豊齋)
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◉参考文献
奈良製墨組合ホームページ
『日本大百科全書』『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』など(コトバンク)