墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。
書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。
大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。
墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。
vol.12 篆書と隷書はこんな筆で書きたい
前々回、前回に引き続き、何を書くかということに注目して、筆をピックアップするシリーズ。今回のテーマは、篆書、隷書です。
まずは篆書から。篆書には、秦の始皇帝の時代に、丞相の李斯(りし)が創始・制定(文字の統一)したといわれる「小篆」と、それ以前の書体の「大篆」がありますが、「大篆」には、たとえば「石鼓文」(せっこぶん)(原石は北京故宮博物院蔵)があり、呉昌碩がよく臨書したことでも知られています。そんな「大篆」を書くときには、下のような筆はいかがでしょうか。すべて羊毫です。じっくりと書くことで、味わい深い線質を表現することができます。
一方、「小篆」は「大篆」を簡略化して作られました。李斯の書と伝えられている「泰山刻石」(たいざんこくせき)が有名ですが、身近なところでいえば、印鑑で使用されている書体です。縦長の字形で均一な線。左右対称。そんな「小篆」を書くときには、下のような筆はいかがでしょうか。鋒先のまとまりがよく、書きやすい熊野製の筆です。原毛はイタチ毛。すっきりと整った線がシャープに表現できるはずです。
最後に、隷書です。隷書は、小篆を簡略化して作られた、漢代の正式書体。扁平な字形で、特に横画に「波勢」(はせい)と呼ばれるうねりがあり、横画の終筆の跳ね上がるような部分は「波磔」(はたく)と呼ばれています。「波磔」が完成した隷書を「八分」(はっぷん)といい、完成以前の初期の隷書を「古隷」(これい)といいます。さて、そんな隷書、特に「八分」を書くときには、下のような筆はいかがでしょうか。いずれもイタチ毛の、鋒が短い短鋒です。毛先がよく利き、「波磔」もきれいに決まります。
(協力・写真提供/栄豊齋)
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