墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。
書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。
大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。
墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。
vol.22 固形墨いろいろ
今回は、気になる固形墨をいくつかご紹介しましょう。
まずは油煙墨で、キーワードは、紅花(こうか・べにばな)。
奈良・古梅園製の「聖煙紅花墨」(せいえんこうかぼく)は、菜種油から採煙した油煙墨。「紅花墨」シリーズの中の最上級品で、最も細かい粒子の煤を使用し、墨の伸びが良く、墨色は濃墨では艶のある純黒、淡墨では茶系の黒を示します。
古梅園は室町時代末に創業し、「紅花墨」が誕生したのは、いまから300年ほど前のこと。紅花の汁を加えて製造されたことから、この名称がつけられました。また、「紅花墨」の通称は「お花墨」。「紅」の草書が「お」のように見えることから、そのように呼ばれるようになりました。
そして、同じ古梅園製「べにばな」も、菜種油から採煙した油煙墨。山形県産の紅花から抽出した本紅を加えて、墨色の黒がいっそう引き立つように工夫されています。
次は松煙墨で、キーワードは、紀州(和歌山県)。
松煙には、生松(いきまつ)松煙と、落松(おちまつ)松煙の2種類がありましたが(vol.19 参照)、奈良・墨運堂製の「大和雅墨 玉品」は、原料に紀州の生松松煙を使用しています。紀州は松煙の生産が盛んでしたが、昭和30年過ぎに廃絶してしまったため、紀州の松煙を使用した松煙墨はとても稀少。製造から年代が経過した枯墨で、赤紫系の墨色は独特の美しさ。
また、鈴鹿・進誠堂製の「生粋松煙」も、紀州の松煙を使用した松煙墨。赤松より採煙した煤のみで製錬し、柔らかく優しい墨色が特徴。青墨よりも自然な墨の色合いを感じさせます。
(協力・写真提供/栄豊齋)
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