墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。
書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。
大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。
墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。
vol.21 近現代の書家が題字を揮毫した墨
墨のなかには、近現代の書家が題字を揮毫した製品があります。今回はそのなかからいくつか、その墨の特徴を含めてご紹介しましょう。
最初に取り上げる「玉品」は、桑原翠邦(1906〜1995)の揮毫。墨色はやや濁りのある赤茶系の黒、濃いときは赤みを帯びた力強い黒。普通の濃さから濃墨まで使用可。古くなるほど墨の伸びが良くなり、超濃墨での使用も可能になってきますが、淡墨には不向き。漢字の練習だけではなく、作品用としても最適。半紙・画仙紙向き。
「流輝」は、金子鷗亭(1906〜2001)の揮毫。墨色は薄茶紫系の黒、濃いときは茶紫がかった複雑な黒。淡墨から濃墨まで使用可。古くなるほど個性が出てきて、超淡墨・超濃墨での使用も可能に。漢字・かな条幅の作品用で、画仙紙向き。
「杉影」「和唐精妙」は、青山杉雨(1912〜1993)の揮毫。「杉影」の墨色は、やや濁りのある青味を帯びた黒、濃墨では厚みのある青系の強い黒。古くなるほど墨の伸びが良くなり、超濃墨での使用も可能に。淡墨には不向き。
「和唐精妙」の墨色は、薄茶紫系の黒。濃くなると重厚で複雑な、茶みがかった品のよい黒。淡墨から濃墨まで使用可。古くなるほど個性が出てきて、超淡墨・超濃墨での使用も可能に。漢字・かな条幅の作品用で、画仙紙向き。
「はな橘」「よこぶえ」「うめがえ」は、杉岡華邨(1913〜2012)の揮毫。「はな橘」の墨色は薄茶系の黒、濃いときは艶のある力強い純黒。普通の濃さから濃墨まで。古くなるほど墨の伸びも一層良くなり、超濃墨での使用も可能に。仮名作品用で、料紙向き。特に胡粉の強い料紙に最適。
「よこぶえ」は、膠の割合が極限まで少なくなるように調整されていて、滑らかな磨り味。墨の伸びも良く、凛とした煤の色がストレートに際立ちます。黒味が強いシャープな線で、華麗な料紙にも確かな表現が可能。
「うめが枝」は透明感のある墨色で、暖かみのある赤紫系の黒。濃いときは上品な艶のある漆黒。微粒子の油煙で墨の伸びが良く、普通の濃さから中濃墨までの使用が可能。仮名作品用で、画仙紙向き。
最後に、液体墨をひとつ。「書仙」は膠系の液墨墨で、上條信山(1907〜1997)の揮毫。膠分が枯れていて、墨の伸びが良く、墨色は格調高く、優雅。筆跡の重なりが美しく表現できて、漢字の作品用に最適。
(協力・写真提供/栄豊齋)
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