文房四宝だいすき帳 vol.19 生松松煙と落松松煙

墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。
書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。
大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。

墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。

vol.19 生松松煙と落松松煙

 前回は液体墨がテーマでしたが、今回は再び、固形墨について。固形墨には、松煙墨と油煙墨がありました。松煙墨は、松煙(松を燃やして採取した煤)を使用して作られた墨。油煙墨は、油煙(植物性油を燃やして採取した煤)を使用して作られた墨。
 ところで、松煙には、生松(いきまつ)松煙と、落松(おちまつ)松煙の2種類があります。そのことを明記している製品もありますので、ご紹介しておきましょう。
 生松松煙は、傷をつけて松ヤニがにじみ出た松材を燃やして採取した煤のこと。

生松松煙を使用した墨の例。
鈴鹿墨「晴耕雨読」(進誠堂)。

 これに対して、落松松煙は、枯れた松材を燃やして採取した煤のこと。

落松松煙を使用した墨の例。
「おちまつ 松煙墨」(古梅園)。

 いずれも松煙であることに違いはありませんが、墨色の微妙な違いを楽しむことができます。
 なお、下は、阿膠(あこう・あきょう)という、とても稀少な膠を使用した生松松煙の墨。阿膠とは、中国の東阿(山東省東阿県)産の、ロバの皮を煮沸して作られた膠。かすかで上品な青味が特徴の墨に仕上がっています。

「阿膠松煙墨」(古梅園)。
生松松煙と阿膠で作られた墨。漢字にも仮名にも最適。

(協力・写真提供/栄豊齋)

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