文房四宝だいすき帳 vol.14 松煙墨と油煙墨

墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。
書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。
大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。

墨に遊び、書作を楽しむとき、なくてはならない文房四宝(筆墨硯紙)。書室のなかでいつも一緒にいてくれて、眺めているだけでもしあわせな気持ち。大好き(だいすき)な文房四宝とその周辺のあれこれについて、気ままに綴っていきます。

vol.14 松煙墨と油煙墨

 これまで筆の話題を取り上げてきましたが、今回から墨について考えてみたいと思います。
 まず、墨の原料は、何でしょうか。墨とは、単純にいえば、煤(すす)を膠(にかわ)で固めたもの。もう少しいえば、煤と膠を練り合わせ、そこに香料を加えてよく揉み込み、型に入れて形を整えたもの。これが、固形墨です。
 では、煤とは、何でしょうか。煤とは、物が燃えるときに、煙とともに生じる炭素の微粒子(微細な炭素粉)のこと。そして、膠とは、動物の皮や骨などを煮沸し、コラーゲンを抽出して凝固させたもの(ゼラチン)。膠の役割は、まずは煤を固めること(固形墨)。次いで墨が磨られるときには、煤と水をなじませること。最後に紙に書かれるときには、煤を紙に定着させ、墨色に艶(つや)を与えることです。
 さて、墨は、煤の種類によって、主に松煙墨(しょうえんぼく)と油煙墨(ゆえんぼく)に分類されます。
 松煙とは、松を燃やして得られる煤のこと。したがって、松煙墨とは、墨の主原料である煤として、松煙を使用した墨ということになります。

松煙墨「古松心」(墨運堂)
松煙墨「瑞禾」(墨運堂)

 他方、油煙とは、文字通りとしては、油を燃やして得られる煤のこと。油といってもさまざまですが、油煙墨に使用されているのは、菜種(なたね)や胡麻(ごま)などの植物性油の油煙です。

油煙墨「墨皇霊契」(墨運堂)
油煙墨「玄鵠」(墨運堂)

 ところで、松煙墨と油煙墨では、墨の色合いが異なります。色合いの違いには、それぞれの煤の粒子の大きさが影響しています。
 松煙墨の煤(松煙)の粒子は均一ではなく、大小さまざまなサイズが混ざっていて、大きい粒子が多いと青系の墨色になり、細かい粒子が多いと、赤系、茶系の墨色になります。青系の煤の粒子は、赤系、茶系の粒子の10倍以上も大きいのだそうです。また、細かい粒子と粗い粒子が混合していると、紫紺系の墨色になります。
 これに対して、油煙墨の煤(油煙)の粒子は、松煙墨のそれと比べて細かく、均一。赤系、茶系の墨色になりますが、粒子が細かいので、松煙墨よりも光沢の艶やかさが際立ちます。

(協力・写真提供/栄豊齋)

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栄豊齋(電話 03-3258-9088)

◉参考文献
奈良製墨組合ホームページ
墨運堂ホームページ

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