今月の名品 vol.7 春秋経伝集解残巻

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春秋経伝集解残巻
唐時代 写本

 『春秋』は中国・春秋時代の魯国の史書である。孔子が筆削したものとされて、隠公から哀公まで12代242年間の事蹟について、善悪を弁じ、名分を正し、大義を掲げ、天下後世に尊王の道を示している。儒家思想の原点の一として「五経」及び「十三経」の一に数えられ、編年体史書の祖でもある。『春秋』を解釈したものに、左氏・公羊・穀梁などがあり、本書は左氏伝に更に注釈をつけた晋・杜預の『春秋経伝集解』であり、唐時代までは服虔の『春秋左氏伝解誼』と並び最も用いられた左氏伝の注釈書となった。
 文中「丙」字の末筆を缺き、唐・高祖の父の諱が「昞」だったことから、唐時代の書写に成るものと推定される。縦 27.5 cm、横 159.5 cm。「昭公四年・伝」の後半弱、「昭公五年・経」全体、「昭公五年・伝」前半3分の1を存する。
 儒家の代表的な経典として唐の時代に書かれた本書は、通行本との相違点が少なからずに残されており、学術上の校勘価値は言うまでもない。一方、唐写本として、本書は唐代の書の研究においても重要な位置を占めている。
 書道博物館には、本書と同じ手によるものが収蔵されている。書道博物館本は「昭公五年・伝」の後半の凡そ3分の2が残っていて、ちょうど今回ご紹介したものと内容が連続しており、もともとは繋がった1巻と推測できる。

◉参考文献
近藤春雄『中国学芸大事典』(大修館書店、1978年)

巻頭(部分)

◉資料提供/光和書房
◉解説/劉斯倫

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