清・高宗 御撰
御題養正図詩 上下冊
清・乾隆51年(1786) 内府拓本
「養正図」は中国の伝統的な帝王教育の理想を反映した画題で、その内容は儒教の道徳や行動規範に沿った古代皇帝の事蹟を描いたものである。明の万暦25年、皇子講官の焦竑は西周の文王から北宋の仁宗までの60の故事を選び、『養正図解』を編纂し、「養正図」というテーマの構成を確立した。
『養正図解』は明・清時代の皇室教育の必読書であり、『皇朝通志』巻116「金石略二」の記録によれば、清の乾隆23年、乾隆帝は『養正図解』の60の故事に対してそれぞれ詩を作り、51年には更に自ら揮毫したという。乾隆帝の書はのちに内府で上石され拓本を採るようになり、今回ご紹介するのがそれそのものである。
本品は乾隆帝の直筆を元に上石したもので、原作の筆致を完璧に再現した中国の碑刻工芸の最高峰と言っても過言ではない。四周双辺で欄外に綿密な花枠があり、毎半葉5行、行9字。版心及び界線はともになし。
先代に倣って嘉慶帝は『養正図解』に賛を作り、『養正図賛』を著したことがあるが、それが台湾の故宮博物院に現在収蔵されている。一方、乾隆帝の『御題養正図詩』は非常に流伝が稀なもので、私見の限り、国内外の主要な収集機関の公開データには該当する記録がなく、ただ『瀋陽故宮志』附録「盛京文物清冊」には、瀋陽故宮に所蔵してあった文物を点検する際に本書2冊を発見したという記録が残っている。
資料提供/光和書房
解説/劉斯倫