今月の名品 vol.52 田中一村 枇杷図

田中一村 枇杷図
昭和時代

 日本画家、田中一村(たなか・いっそん、1908〜1977)。本名は田中孝。彫刻家の父・彌吉(号は稲村)の長男。彌吉より米邨の号を与えられ、後に柳一村、さらに田中一村と改めた。
 東京、千葉で活動の後、1958年、奄美大島に単身移住。愛してやまなかった奄美の亜熱帯の自然を、鋭い観察力と画力で力強く繊細な花鳥画の世界に描き上げた。日本画史の中でも非常に個性的な画家だ。逝去後、1979年に奄美で遺作展が開かれ、1984年にはNHK教育テレビ「日曜美術館」で紹介され、これをきっかけに全国的な注目を集めるようになる。
 この作品は東京美術学校(現・東京芸術大学)中退後、趙之謙や呉昌碩風の南画を描いていた時期のものであろう。

 五月天熱換葛衣、家家盧橘黄且肥。
 鳥疑金彈不敢啄、忍饑空向林間飛。

 呉昌碩(苦鐵道人)の詩。盧橘は枇杷のこと。一村は天才少年と謳われ、青年期、熱心に趙之謙や呉昌碩風の南画を勉強したことは、後の独特な日本画を作り上げるのに寄与したことと思われる。

◉資料提供/光和書房
◉解説/呉忠銘(光和書房社長)

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