今月の名品 vol.50 何応欽 扁額「文化津梁」

33×110cm

何応欽 扁額「文化津梁」

 「文化津梁」の4文字である。文化領域の架け橋の意味である。書き振りは楷書体で、堂々としている。書道家より能筆な文化人、政治家を匂わせる。
 落款は、何応欽。何応欽(か・おうきん、1890〜1987)は、中華民国の軍人で、東京振武学校第11期、日本陸軍士官学校28期卒業。黔軍(貴州陸軍)出身で、後に孫文配下となり、国民革命軍創設に貢献した。孫の死後はかねてから親しかった蔣介石を支え、その右腕と評されるまでになった。台湾に渡ってから、文化交流事業に尽力し、日本、アメリカ、東南アジア等を歴訪している。

 上款、宛先の人を見ると、齊藤了英とある。齊藤了英(1916〜1996)は、大昭和製紙(現・日本製紙)名誉会長を務めた日本の実業家である。
 1990年5月、ファン・ゴッホの「医師ガシェの肖像」を125億円で、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」を119億円で落札した。その際、「日本間で見るルノワール、ゴッホはいいよ。死んだら棺桶に入れてもらうつもりだ」という文化を冒涜するような発言をし、「文化遺産を灰にするつもりか」と英仏の美術界から猛烈な非難を浴びるという騒動になった。後に「作品に対する愛情を表現した言葉のあや」と言い残している。この時、すでに何応欽は亡くなっていたが、二人の間にそれまでどんな交流があったのだろうと想像してしまう。
 「文化津梁」のこの額は、美術品を情熱的に蒐集している齊藤了英への、何応欽からの最大の褒め言葉だと思える。

◉資料提供/光和書房
◉解説/呉忠銘(光和書房社長)

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次