
35×118
額装
初世中村蘭臺 描印
明治38年(1905)
初世中村蘭臺(1856~1915)は明治を代表する印人で、今なお人気は衰えない。石印のみでなく、木印、描印、筆筒、煙管入れなど、多くの媒体で作品を遺している。
今回ご紹介する作品は絹本の描印で、落款に「歳在乙巳元旦」とあることから1905年蘭臺が48歳ごろの作品とみられる。本紙の大きさは35センチ×118センチ、『金石索』に掲載されているものを描印調で描いている。
『金石索』は清代に馮雲鵬・馮雲鵷兄弟によって編纂された、中国の代表的な金石を収録した書物であり、古代の石刻や金石文字の記録を含むものである。それぞれ描印の右側に書かれている題は『金石索』と対応しており、基となったものを閲覧することが可能である。


右「漢大吉昌洗」は「大吉昌」の両脇に魚が描かれている。青銅器に鋳造されたものを基としている。魚は富・幸福・子孫繁栄などの吉祥のシンボルとされており、縁起の良いものとして古くから珍重されている。

中「漢永元鷺魚洗」は、『金石索』に於いては「永元十三年三月廿四日造」を挟んで鷺の逆側には魚が描かれており、半円形の枠は描かれていない。こちらも青銅器に鋳造されたものを基としている。


左「即墨刀」の「節墨之法化」は斉国(現在の山東省付近)で鋳造された、青銅製の刀幣である。この形状は墨や文鎮にも用いられるなど、現在でも好まれている。



『金石索』より
初世中村蘭臺の遺した様々な作品は、その背景を知ることでより深く味わうことが出来、大変興味深い。現代でも色褪せないこれらの作品を目にすることができるのは眼福の至りである。
◉資料提供/光和書房
◉解説/村尾海心