


溥儒・汪慎生 詩画扇面
中華民国期
溥儒(1896〜1963)──初めの字は仲衡、のちに字を心畬と改め、号を羲皇上人・西山逸士とした。北京の人であり、著名な書画家・収蔵家である。清朝恭親王・奕訢の孫であり、末代皇帝・溥儀の従兄にあたる。
本作は汪慎生(1896~1972)の作品と対をなす、2点1組の貴重な扇面コレクションである。この扇面において、溥儒は山間の景を描き、画上には「山色無定姿、陰晴変明晦」と詩を題している。書は自然でありながらも力強く、筆致に気韻が満ちている。
重なり合う山々は、まるで風雨が近づくかのように描かれ、その中を一艘の小舟がゆらりと川面を渡る。風景は生き生きとしており、詩と画が見事に響き合っている。まさに「山雨欲来風満楼」(山雨来たらんとして風楼に満つ)の緊張感と、「軽舟已過万重山」(軽舟すでに万重の山を過ぐ)の悠然さ、その両極の情景が一幅に共存しているのである。
それはまた、波瀾万丈でありながらも気高く生きた、溥儒自身の一生を映し出すかのようである。



※王揖唐(1877〜1948)は政治家




◉資料提供/光和書房
◉解説/巖思穎