今月の名品 vol.18 西域出土残紙零葉集

第9葉

西域出土残紙零葉集
六朝時代前期

 最近市場に現れた「西域出土残紙零葉集」である。戦前の歴史研究に携わられた方の収集資料の一件と想像出来る。恐らく書斎の中の反故紙を使用し、制作された10葉足らずの仮綴じ本である。紺の布表紙には、木版刷の旧い書葉1枚が貼られ小さな朱色の付箋に「表紙元梓」と毛筆で書かれている。9葉の残紙が貼られている。この中の第5、6、9葉の3紙を紹介しよう。
 一見して、旧い写経の残片である。最後の残片が割合大きい。そしてこれらは、書風が大変似ており、同一の写経の残片と想像した。その書風が、実に珍しい北涼系、中国六朝前期の書風である。横画の起筆は鋭く、止めることなく一気に横に力強く押し出す。楷書体完成前の書風である。三国期から六朝期にかけて紀年のある西域出土の写経が、先人の著作に見る事が出来る。また大谷探検隊の将来した写経残片にもここに紹介した写経と同系の書風がある。この「西域出土残紙零葉集」の残紙片も近代に西域に出土し、識者の目に止まり、大切に保存されてきた資料であろうか。

第5葉
第6葉
表紙
全9葉の残紙

◉資料提供/光和書房
◉解説/伊藤滋

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