今月の名品 vol.16 森鷗外書翰

森鷗外書翰 賀古鶴所宛
19×47

森鷗外書翰
賀古鶴所宛
明治・大正時代

 明治・大正時代の日本を代表するような小説家の一人である。以前は高校の教科書に取り上げられた「舞姫」や「高瀬舟」などを通して、多くの人に知られてきた。
 ここに示したのは、今年の春の古書店の展示入札会に出品された手紙である。当日の展示会では、文豪の手紙であり、目を通すと文房具の硯に関することが書かれてあった。中国の『欽定西清硯譜』に所載された硯の数、図版の量などの概略を記していた。気楽に認めた手紙のように感じた。偉大な文豪の手紙は、高いので眺め楽しんだだけであった。後日偶然なことからこの手紙を譲り受けた。当日の会では、それほどの価格でなかったようである。
 額装の手紙を持ち帰り、額を点検すると裏に当時のやや薄紫色の封筒が、そのままに付されてあった。宛先は「賀古鶴所(かこつるど)」とあり、同窓で、数年年長であり、鷗外が終生の友とした人物であった。封筒の宛名には、賀古鶴所様とあり、手紙の末尾の署名は、森林太郎と森の認め印が、宛名は賀古学兄と書かれている。
 これと同じような手紙は、昔から神保町の古書店で目にしていた。鷗外の賀古宛である。内容も同じく硯に関する『端渓硯史』という本が神田の古書店にあるとの案内である。その手紙の右端には、「書店の名は山本の由」と追記されてあり、神保町の漢籍専門の山本書店の店内の壁に額装で飾られている。以前、本郷の古書店『柏林社』のご主人古屋幸太郎氏が、この手紙を入手し、同業の山本さんの名があるので差し上げたと、話しておられたのを思い出した。

◉資料提供/木雞室
◉解説/伊藤滋

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