顔氏家廟碑(がんしかびょうひ)
780年(唐・建中元年)
『顔惟貞廟碑』とも言う。顔真卿の撰ならびに書。李陽冰の篆額。この碑は、顔真卿が父惟貞を祀った廟に顔氏一族の事跡を記したものである。現存する顔書碑の最後に位置し、顔真卿の代表作とされる。顔書のうちで最も内に力を秘め、類なき重厚さを宿し、荘厳な趣を呈している。
両碑側の文字は、碑陽・碑陰よりやや小さく趣が少し異なり、大字『麻姑仙壇記』に近い書風を感じさせる。先人の中には、楷書の至宝と評するものもあれば、醜怪悪札の祖と貶すものもある。またこの碑は、宋代に重刻されたとの説もある。
この『顔氏家廟碑』の拓本には、全く同じ字画でありながら、拓の取り方の違いのせいか、またはある時期に碑文に手を加えて字画を刻り直したのか、微妙に異なるものがある。一つはやや旧く墨が濃い拓であり、一つは近拓で墨がそれほど重くない拓である。図版の拓本は、楊守敬愛蔵の黒の重い烏金拓の精本である。