鄭道昭題字(ていどうしょうだいじ)
6世紀(北魏時代)
鄭道昭の摩崖刻石の中にやや小さい『題字』の類がある。山の名前を刻した5字位から、10字余りの簡単な文の刻石で、20種余りある。ここに示した『此天柱之山題字』『當門石坐題字』『上遊下息題字』『右闕題字』の4種などは、題字類の傑作というべきものであろう。
『此天柱之山題字』の伸びやかな響きのある線は、摩崖のやや粗い岩肌を背景にして独自の世界を創り出している。他の題字も、やや緊張気味に澄んだ趣のもの、気分が高揚しているものと様々な風情を見せている。『鄭羲下碑』や『論経書詩』などとは全く異なった書品を呈している。
(木雞室蔵併記)