木雞室名品《游墨春秋》 第5回 美人董氏墓誌銘

美人董氏墓誌銘(びじんとうしぼしめい)
597年(隋・開皇17年)

巻頭

 隋王朝は僅か30余年と非常に短命であった。しかし、書の面では割合多くの石刻が残されている。とりわけ墓誌銘は多く、書風も多彩である。『美人董氏墓誌銘』もその代表とでもいうべき、当時の新しい進んだ楷書体を示している。清朝の嘉慶年間(1796〜1820)に陝西にて出土した。その後、原石は上海の徐紫珊に帰し、ほどなく戦乱で損壊したと伝えられる。そのため原石拓本は非常に得難い。
 この拓本は、数年前、縁あって我が有に帰した。擦拓のやや淡い精拓本である。「淵如秘篋中物」の印がおされている。恐らく、この当時の金石家として活躍した孫星衍(乾隆18年生、嘉慶23年没、字は淵如)の旧蔵本ではなかろうか。また、末尾には清末の収蔵家、李蘇鄰の跋が付されている。
 日本では、中村不折翁の書道博物館と三井文庫にそれぞれ蔵され紹介されている。しかし、三井文庫本は重刻本であり、原石拓ではない。数種ある重刻本のやや字画の太いもののひとつである。

(木雞室蔵併記)

巻頭
巻末
李蘇鄰の跋文
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