木雞室名品《游墨春秋》 第1回 雁塔聖教序

雁塔聖教序(がんとうしょうぎょうじょ)
653年(唐・永徽4年)

巻頭
(「大唐三蔵聖教序」)

 初唐の三大家の一人、褚遂良の書である。碑は西安の慈恩寺の大雁塔の下にある。序碑と記碑の二碑からなる。褚遂良の代表作であり、唐代楷書の傑作の一である。痩勁な点画で、飛動する筆致は、行書体の趣を感じさせる。抑揚のある筆勢は、一見すると弱く見えるが、熟視し、学べば学ぶほどその力強さ、大胆な動きに驚かされる。この褚遂良の書風は後世に大きな影響を与え、現代にあっても学ぶ人は多い。
 ここに示した拓本は、一般に「治」字未封本(「治」の字の末画が刻されていない)と称される明拓本である。「烏金拓」であるが、細かい字画までが非常に鮮明である。東京国立博物館蔵の「明拓本」とは拓墨の調子が異なり、烏金拓の黒の中に、しっとりと浮き上がった字画は、褚遂良の真蹟の趣を感じさせる。

(木雞室蔵併記)

左頁1行目に、末画が刻されていない「治」字
(「大唐三蔵聖教序記」)
表紙
内題簽
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