
32.5×128.5
初世中村蘭臺 木額
こちらの作は木板に大印5顆の印影が彫られており、印泥がつく位置に金の塗料が塗られている。印文は各写真の下側を参照。裏には紐がついており、壁にかけて鑑賞されていたことが伺える。





「明治癸卯夏日」と落款にあることから、1903年蘭臺が47歳ごろの作品とみられるが、落款の横に「壬申東洲刀」と刻されている。
このことについて、有識者によると、「明治癸卯・1903年(明治36年)、初世蘭台は長野に滞在しており、その折に制作した『描印扁額』が存在し、壬申・1932年(昭和7年)に至り、東洲氏がこれを所蔵、あるいは借用した上で木額を刻したのではないか。原稿を忠実に再現しようとする丁寧な刻法が伺え、周囲の「はつり(削り)」の技法には他作との差異が認められる」との見解である。
金文・小篆・印篆と多種の文字種で彫られており、それぞれに違った趣が感じられる。朱文はどれも伸びやかに構成されており、無理のない空間の妙がある。①・③は印面を大きくし、字間を大きく取っているのに対し、④・⑤は線が接挿するほど字を大きくしているが、その分線間を取っている。白文の②は欠けが鋭く、石印材では表現しづらい違った趣を感じる。
石印では難しいとされる大規模な印も、描印・木額という形をとることで、そのスケールを存分に発揮することができる。こうした表現の広がりは、この媒体ならではの魅力であるが、同時にそれは、長年培われた篆刻の力が導き出した必然の帰結といえるだろう。

◉資料提供/光和書房
◉解説/村尾海心