
漢吉語塼「富楽未央 子孫益昌」 姚鋈 頴拓本
漢時代
文/伊藤 滋(木雞室)
頴拓とは、器物に上紙、上墨することなく、渇筆などを巧みに用いてあたかも拓されたかのように仕上げられたものをいう。清末民国期に活躍した著名な金石家・姚華(1876~1930、字は一鄂、茫父と号す、貴州の人、書画篆刻等を善くする)が、この頴拓に優れ、美事な作品を残している。ここに示した漢時代の8字の吉語塼の頴拓は、姚華の長男・姚鋈(1895〜1969、字は天沃、忍不忍齊と号す、著名な農学家)の作である。
塼が斜めに割れていること、そして陽刻の字画や罫線は、濃墨を用いてやや濃く、拓包が軽く触れた部分は淡墨で表現している。この頴拓に用いられた塼文拓本が、民国期に刊行された『専門名家』に原寸大で収録されている。参考にその拓本図版を示した。左上方から右下に斜めに断裂痕を見ることが出来る。恐らくこの断裂痕のある塼文を模写して頴拓に仕上げられたのであろう。
姚鋈は父・姚華と同じく日本に留学し、農学を学んでいる。日本滞在中に姚華からの手紙が伝えられており、書法にも言及した部分があり、当時の家庭教育の一端を見ることが出来る。この頴拓法、題記の小字、鑑蔵印などからも父・姚華の影響を見ることができる。左端の題記には、この頴拓を手がけたのは1935年であったが、事情により中断し、翌年の新年に仕上げたと記されている。新春に相応しい作であろうか。

(部分)

(左)

(右)

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