争座位帖(そうざいじょう)
764年(唐・広徳2年)



(1〜12行目)
顔真卿の『争座位帖』は、王羲之の『蘭亭序』とともに行書の双璧をなすものであろう。この『争座位帖』の刻本は種々のものがあるが、現在西安の碑林博物館に蔵される『関中本』と称されるものが最も優れたものである。この刻本は古くから拓本が取られたようであるが、石質がいいのか保存がいいのか、近代の精拓本であれば十分にその書を見ることができる。
この家蔵本は、明の王鐸40代頃の跋文のある明拓の旧本である。この『争座位帖』の「明拓」「宋拓」と称せられる旧本は填墨や塗墨されたものが多く、6行目から10行目にかけて斜めにある石損痕などが全く見られない。印刷されたものにもこうしたものがある。この旧拓本はこうした塗墨などは少なく、やや重い拓調である。王鐸の跋のほかに清末の金石収蔵家梁章鉅の跋、郭尚先の銀泥の題記、それに陳介祺の観記なども付され、明拓の善本といえようか。
(木雞室蔵併記)

郭尚先の銀泥の題記(左側3行)


