趙城金蔵『大方広十輪経』巻七
金時代
中国国家図書館によると『趙城金蔵』は、金代の仏教の信女・崔法珍が仏祖に対する宿仰の敬虔なるをあらわさんとして、腕を断って寄付を募るという方法により資金を集めて刻印した一揃いの「大蔵経」である。
この「大蔵経」は金・皇統8年(1148)に刻印を開始し、金・大定13年(1173)にようやくすべて刻印が完了したもので、前後あわせて25年を費やしている。「大蔵経」の印刷製作が完成して後に、山西省趙城県広勝寺に収蔵されたために『趙城金蔵』と呼ばれる。
『趙城金蔵』は1933年に発見され、戦争期に転々と経巡ったため、長期にわたり非常に劣悪な環境におかれ、少なからぬ経巻が湿気を帯びまた一面にクロカビが生え、経巻全体が一塊にくっついて、外観からは一本の木炭のよう、硬いことは一本の棒のようという有様となっていた。現在は中国国家図書館にほとんど収蔵され、『永楽大典』『四庫全書』『敦煌遺書』と合わせ、四大コレクションとなっている。
『趙城金蔵』には、数年前に中国のオークションで約10億円で取引された以外の流通記録はない。この『大方広十輪経』巻七は、首尾完全で、ほぼ完璧な状態を示している。民国期の北京の有名な骨董商・黄浚の旧蔵で、「匋仏龕」なる鑑蔵印が文末に押されている。
◉資料提供/光和書房
◉解説/呉 忠銘