春敬記念書道文庫の古筆 第8回 西本願寺三十六人集 石山切(伊勢集)

春敬記念書道文庫より、平安古筆の名品をご紹介する連載。
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西本願寺三十六人集 石山切(伊勢集)
紙本墨書 一幅
平安時代 12世紀

20.3×31.1cm

 この三十六人家集は、天永3年(1112)、白河法皇の六十賀の祝いに贈られたものである。その後、天文18年(1549)に後奈良天皇から本願寺第十世の証如上人に下賜され、昭和4年(1929)に武蔵野女子大学(現在の武蔵野大学)設立資金調達のため、「伊勢集」と「貫之集下」が分割されるまで西本願寺に秘蔵されていた。分割される際、証如上人に下賜された当時の本願寺の本山があった場所に因み、「石山切」と名付けた。
 各家集とも粘葉装の冊子本。人麿集、貫之集、能宣集は上下冊、その他は各1冊からなり、全39冊から構成される。そのうち、兼輔集、小町集、人麿集、業平集はのちの時代の補写本である。古い時代に一部断簡となって現在に伝わる同筆の連れも認められる。書風については20人の寄合書きであることが研究されている。
 この家集が特に素晴らしいものである理由は、全体に料紙装飾の宝庫といわれ、唐紙の刷文様、下絵装飾、金銀箔や砂子、野毛の装飾、破り継、切り継、重ね継の技法がふんだんに用いられていることである。この「伊勢集」はもとは95枚の粘葉帖で継紙が24紙、鳥の子1紙、唐紙22紙、紙屋紙1紙からなり、特に華麗な料紙が多く用いられた1冊であった。
 書風は豊円でかつ線が引き締まっていて形が端正であり、「友則集」「斎宮女御集」と同筆である。臨書手本としても大いに愛好されている名品。本品は私家集「伊勢集」268~273番の部分。

◉所蔵/一般社団法人書芸文化院 春敬記念書道文庫
◉解説/飯島太比呂

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