春敬記念書道文庫の古筆 第5回 伝藤原行成筆 関戸本和漢朗詠集切

春敬記念書道文庫より、平安古筆の名品をご紹介する連載。
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伝藤原行成筆 関戸本和漢朗詠集切
紙本墨書 一幅
平安時代 11世紀

26.6×45.4cm

 藤原公任が編纂した「和漢朗詠集」の写本の断簡である。本品は巻上「鶯」63~74番の漢詩と和歌の部分。名古屋の関戸家に上下2巻の完全な形で伝来していたが、昭和26年頃から分割され一部が零巻(不完全な形で残る巻物)で残り、その他は断簡となり諸家に分蔵されている。現在確認できるのは40点ほどである。
 白、紫、緑、赤、藍など色とりどりの染紙を交えた雁皮質の料紙で、もとの装丁は巻子装。本品は藍と白の2枚続きの料紙。伝称筆者を藤原行成と伝えるが、真筆とは考えづらく、「高野切第二種」「雲紙本和漢朗詠集」「桂本万葉集(栂尾切)」などと同筆で、当代一の能書家であった源兼行を筆者とするのが定説になっている。筆管を右に傾けて筆を運ぶ側筆を駆使した筆致で、抑揚があり豊潤で安定感がある。本品は関戸家から早い時期に益田鈍翁に贈られたもので、「鶯」という部分であることから茶事の掛物として大変喜ばれる逸品である。料紙を継いだ部分にも歌を書いており、巻子本としては珍しい書き方をしている。

◉所蔵/一般社団法人書芸文化院 春敬記念書道文庫
◉解説/飯島太比呂

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