春敬記念書道文庫の古筆 第4回 伝紀貫之筆 高野切第一種

春敬記念書道文庫より、平安古筆の名品をご紹介する連載。
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伝紀貫之筆 高野切第一種
紙本墨書 一幅
平安時代 11世紀

25.7×6.0cm

 日本初の勅撰和歌集である「古今和歌集」の写本の断簡である。本品は巻第1「春歌上」55番の和歌の部分。現存する古今和歌集の写本の中で最古のものであり、もとの装丁は巻子装。巻第9の巻頭の断簡が和歌山の高野山に伝来したことに因む名称。安土桃山時代、豊臣秀吉が、高野山文殊院の僧侶であった木喰応其の功績を認めて与えたものである。
 高野切の伝称筆者は紀貫之であるが、書風や仮名遣いの特徴から貫之の時代から約150年後の後冷泉天皇の時代(1045~1068)頃の書写と考えられている。その書風は3人の筆跡に分かれ、巻1、9、20の同筆を「第一種」、巻2、3、5、8の同筆を「第二種」、巻18、19の同筆を「第三種」として区別する。「第一種」の書風は優雅典麗、文字の造形がしっかりとして墨継ぎが巧妙で潤喝が美しく、行取りも見事である。平安時代の仮名の名品の第一に挙げられ、評価が高い。同筆には伝藤原行成筆「大字和漢朗詠集」や伝宗尊親王筆「深窓秘抄」などが挙げられる。料紙は麻紙に雲母砂子を撒いた高尚なものである。

◉所蔵/一般社団法人書芸文化院 春敬記念書道文庫
◉解説/飯島太比呂

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