春敬記念書道文庫より、平安古筆の名品をご紹介する連載。
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伝藤原行成筆 古今集切
紙本墨書 一幅
平安時代 11世紀
古今和歌集の巻11恋の歌一首を、色変わりの斐紙(雁皮紙)を継いだ料紙に大胆に散し書きした断簡である。もとは巻子本であったと考えられ、同筆と思われる断簡が白鶴美術館にある手鑑に1点、個人蔵の1点が知られていた。この他にも後撰和歌集の和歌1点と拾遺和歌集の和歌1点、歌集不明の和歌を書いたサンリツ服部美術館の手鑑にある1点が同筆と確認でき、この6点は料紙の虫食いの状態の共通性から、もとは同じ歌集の巻子から断簡になったと考えられる。
伝称筆者は藤原行成と伝えるが推定できる同筆の遺品は無いことから真筆とは言えない。書風は繊細優美、非常に女性的であり、散らし書きのバランスは絶妙である。書写年代は料紙の特徴や古風な筆致から11世紀初期とも推定されている。
◉所蔵/一般社団法人書芸文化院 春敬記念書道文庫
◉解説/飯島太比呂