春敬記念書道文庫より、平安古筆の名品をご紹介する連載。
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伝藤原佐理筆 筋切
紙本墨書 一幅
平安時代 12世紀
「古今和歌集」全20巻と仮名序、真名序を書写した写本の断簡。もとは上下2冊の粘葉装の冊子本。上巻が名古屋の関戸家に伝わっていたが、戦後まもなくその半分が分割された。下巻は早くから分割されており、現在は巻1から巻20まで多くの断簡が博物館や個人蔵として遺っている。
料紙は鳥の子や染紙に羅紋や飛雲が漉き込まれたり、金銀の揉箔を散らしたり、銀泥の下絵や銀の界線も見え、華麗な装飾を施している。この下絵と銀界は通常とは異なり、横向きになっていて本来は歌合用に用いられる料紙を横にして冊子用に転用している。この銀界の特徴から「筋切」と呼ばれる。また、紙の裏面には篩のような布目があり、そこから裏面の紙に書かれた断簡は「通切」と呼ばれる。
書風はやや縦長に軽快な筆致で書かれ、漢字と仮名の調和に優れ、歌一首を2行から3行書きにしている。伝称筆者は藤原佐理とされるが、近年の研究から世尊寺流第四世の藤原定実(藤原行成の曾孫)と推定されている。「元永本古今集」「巻子本古今集切」「西本願寺三十六人集・人麿集、貫之集上」などとも同書風と考えられている。本品は「古今和歌集」巻第9「羇旅歌」415~417番の和歌。
◉所蔵/一般社団法人書芸文化院 春敬記念書道文庫
◉解説/飯島太比呂