張金界奴本蘭亭序(ちょうきんかいどぼんらんていじょ)
353年(東晋・永和9年)
秋碧堂本蘭亭序
明の崇禎16年の進士となった梁清標は天下の法書名画を蔵した。その中の書として優れたものを刻して刊行した。これが『秋碧堂法書』と称せられる。全8巻、その中でも『晋陸機平復帖』『王羲之蘭亭序』『顔真卿自書告身』『竹山連句』が有名である。ここに収められた蘭亭序を『秋碧堂本蘭亭序』という。これは現在北京故宮博物院蔵の『八柱第一本蘭亭序摹本』を刻した。巻末に「臣張金界奴上進」の7字があるに因んで俗に『張金界奴本』とも称せられる。
『張金界奴本』は虞世南臨本とされ、褚遂良臨の『神龍本』とともに多くの人に学ばれてきた。蘭亭序の最も著名なものの一である。摹本は不鮮明であるが、刻本は非常に鮮明である。この摹本を刻したものとしては明代の『余清斎法帖』と『秋碧堂法書』がある。前者の旧拓の流布するものは少なく、後者はやや多い。
『秋碧堂本』を影印したもので最も有名なものは、戦前の晩翠軒刊の『張金界奴本蘭亭序』(丹羽海鶴の行書の題簽が付されている)がある。これは日下部鳴鶴蔵本を用いたのであろう。「鳴鶴秘笈󠄀」の印が鈐されている。
図版の底本は、擦拓の精拓であり、鳴鶴本に劣らず字画筆勢が生き生きとした佳本である。「張金界奴本蘭亭序 正長署」の題簽は、鳴鶴本を影印した晩翠軒本に使用された丹羽海鶴翁の題簽の親筆である。落款印も鈐されており、印刷本に使用されたそのものである。
(木雞室蔵併記)