木雞室名品《王羲之逍遙》 第15回 神龍半印本蘭亭序

神龍半印本蘭亭序(しんりゅうはんいんぼんらんていじょ)
353年(東晋・永和9年)
明・豊坊刻本

明拓(巻頭部分)

 蘭亭八柱第三本と称される『唐馮承素模蘭亭序』が、明の王済の所蔵であった時に、豊坊や章乙甫らの手によって刻せられた。巻頭右上部に「唐摸蘭亭」と小字で書かれた左に、唐の年号である「神龍」の印の左半分が残されていることに因んで、『神龍半印本』という。

 墨蹟本をもとに刻されたとされるが、両者を仔細に比較してみると異なる点がある。巻頭の「米芾」の印や巻末の「豊坊之印」などが墨蹟本にはない。本文の文字は、墨蹟本の方がやや硬く、筆勢や字画の抑揚がやや弱い。刻本のほうが、鉤模の技術者が巧みなのか、墨蹟本に比べて字画が自然でなめらかである。点画の起筆や終筆にみられる「破筆」「断筆」まで見事に刻している。墨蹟本をもとにしたとは信じ難いほどである。
 豊坊の刻した『神龍半印本』にも多くの翻刻がある。昭和蘭亭記念展の出品本、戦前の博文堂出版の富岡鉄斎翁旧蔵本も翻刻本である。

 上に示したのは、豊坊刻の原石拓で、明拓の淡い蝉翼拓の精本である。下の全拓の整本は、原石の近拓本である。原石の写真も一部示した。よく保存されており、明拓と比べてほぼ同じである。

(木雞室蔵併記)

近拓
近拓(巻頭部分)
原石
原石(巻頭部分)
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