『書史千字文』全文 原文と現代語訳 第1回 開闢から秦代まで 〈001〉〜〈029〉

伊藤文生氏(書文化研究会)による
新連載「『書史千字文』を読む」が始まります(2024年2月から連載開始)。
江戸時代に陸島立誠なる人物によって書かれた『書史千字文』は、

中国書道史を千字文にまとめたもの。
連載では、4字1句からなる原文を2句ずつ読み解いていきますが、

連載開始の前に、まずは全体をざっとご紹介。
ウサギの年にちなみ兎も角、読んでみましょう。

伊藤文生氏(書文化研究会)による新連載「『書史千字文』を読む」が始まります(2024年2月から連載開始)。
江戸時代に陸島立誠なる人物によって書かれた『書史千字文』は、中国書道史を千字文にまとめたもの。
連載では、4字1句からなる原文を2句ずつ読み解いていきますが、連載開始の前に、まずは全体をざっとご紹介。
ウサギの年にちなみ兎も角、読んでみましょう。

【一】
開カイ闢ビャクから殷イン代(?~前1100頃)まで

〈001〉
太極是先、兩儀已全。

太タイ極キョクをもととして、天地が生まれた。

〈002〉
嶽瀆闢地、星辰麗天。
地には山や川ができ、天には星がかがやいた。

〈003〉
圖出榮河、書露洛川。
図トや書ショが川から現れた。

〈004〉
偉哉庖犧、俯仰克宣。
伏フッ羲キが天地を観察して書ショ契ケイを造った。

〈005〉
爻建卦列、繩迂契便。
易エキの卦がくふうされ、結ケツ縄ジョウなどもあった。

〈006〉
六制丕備、九德洽聞。
六リク書ショによって文字が整備され、
九つの徳について広く知られるようになった。

〈007〉
神農禾穗、軒轅慶雲。
(漢字のさまざまな書体として)神シン農ノウは禾カ穂スイ書ショ、
軒ケン轅エン(=黄コウ帝テイ)は雲ウン書ショを作った。

〈008〉
科斗顓頊、仙人嚳君。
科カ斗ト書ショが顓セン頊ギョクによって、
仙セン人ニン書ショが帝テイ嚳コクによって作られた。

〈009〉
鳳興玄囂、龜起放勳。
鸞ラン鳳ポウ書ショは玄ゲン囂ゴウのころに、
亀キ書ショは放ホウ勲クン(=堯ギョウ)のころにできた。

〈010〉
禹帝鐘鼎、遍勒勞勤。
禹ウ帝テイが作らせた鐘ショウ鼎テイには、あらゆる事跡が記録された。

〈011〉
侯岡鳥跡、恍劾妖氛。
侯コウ岡コウ(=蒼ソウ頡ケツ)が鳥の足跡にヒントを得て発明した文字は、
奇怪な邪説を糾ただした。

〈012〉
父乙徴虞、仲作驗殷。
父フ乙イツ尊ソン彝イの銘文によって有ユウ虞グ氏シ(=帝テイ舜シュン)の時代が、
仲チュウ作サク辛シン鼎テイの銘文によって殷イン代のことが分かる。

〈013〉
或載丘索、若盈典墳。
「丘キュウ索サク」や「典テン墳プン」と呼ばれる書物ができた。

【二】
周(前1100?~)および戦国時代(前403~前221)

〈014〉
煥然彼周、郁乎維文。
輝ける周シュウ王朝が、繁栄する文明を開いた。

〈015〉
赤爵宿戸、鸑鷟唳岐。
赤セキ雀ジャクが(周シュウの文ブン王オウの)いえに止まり、
鸑ガク鷟サク(という瑞鳥)が岐キ山で鳴く、
というめでたいできごとがあった。

〈016〉
佚狀禎祥、發開鴻基。
史シ佚イツが瑞祥にかたどった書体をつくり、
発ハツ(=周シュウの武ブ王オウ)が大事業の基礎をひらいた。

〈017〉
旦撰爾雅、保益攸司。
周シュウ公コウ旦タンが『爾ジ雅ガ』をまとめ、保ホ氏シが文字を教育に役立てた。

〈018〉
殳職伯子、塡掌媒氏。
殳シュ書ショは伯ハク氏シが担当し、塡テン書ショは媒バイ氏シが受け持った。

〈019〉
銘存寶和、功在尊彝。
銘文が宝ホウ和ワ鐘ショウにしるされ、功績が龔キョウ伯ハク尊ソン彝イなどに記録された。

〈020〉
衆工允釐、庶績咸煕。
多くの役人をまとめ、もろもろの仕事が盛んになった。

〈021〉
尼聖緣飾、旌延陵碑。
尼ジ聖セイ(=孔コウ子シ)のみごとな篆文は、延エン陵リョウ碑ヒに見ることができる。

〈022〉
門弟麒麟、紀俊喆萎。
(孔子の)弟子による麒キ麟リン書ショは、孔子が失望したことを記録した。

〈023〉
戰國殊軌、款識用私。
戦国時代は国ごとに車の規格が異なり、
文字も国ごとにばらばらで統一されていなかった。

【三】
秦代(前221~前206)

〈024〉
大孕小篆、籀産李斯。
大ダイ篆テンから小ショウ篆テンが生まれ、史シ籀チュウは李リ斯シを産んだ。

〈025〉
獵碣幸脫、玉璽須窺。
(大篆の例としては)石セッ鼓コ文ブンが幸いに伝わり、
(また)玉ギョク璽ジに見ることができる。

〈026〉
八分卽楷、次中所垂。
八ハッ分プンは「楷カイ書ショ」とも呼ばれ、王オウ次ジ中チュウが作ったものだ。

〈027〉
徒隷謂佐、程邈始之。
徒ト隷レイの書は「佐サ書ショ」ともいい、程テイ邈バクから始まる。

〈028〉
爰歷高稿、博學敬爲。
『爰エン歴レキ篇ヘン』は趙チョウ高コウ、『博ハク学ガク篇ヘン』は胡コ母ボ敬ケイがつくった。

〈029〉
嬴政雖暴、簡牘頗資。
嬴エイ政セイ(=秦シンの始シ皇コウ帝テイ)は暴虐であったが、
文字の統一には貢献した。

『書史千字文』版本より
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