伊藤文生氏(書文化研究会)による
新連載「『書史千字文』を読む」が始まります(2024年2月から連載開始)。
江戸時代に陸島立誠なる人物によって書かれた『書史千字文』は、
中国書道史を千字文にまとめたもの。
連載では、4字1句からなる原文を2句ずつ読み解いていきますが、
連載開始の前に、まずは全体をざっとご紹介。
ウサギの年にちなみ兎も角、読んでみましょう。
伊藤文生氏(書文化研究会)による新連載「『書史千字文』を読む」が始まります(2024年2月から連載開始)。
江戸時代に陸島立誠なる人物によって書かれた『書史千字文』は、中国書道史を千字文にまとめたもの。
連載では、4字1句からなる原文を2句ずつ読み解いていきますが、連載開始の前に、まずは全体をざっとご紹介。
ウサギの年にちなみ兎も角、読んでみましょう。
【一】
開闢から殷代(?~前1100頃)まで
〈001〉
太極是先、兩儀已全。
太極をもととして、天地が生まれた。
〈002〉
嶽瀆闢地、星辰麗天。
地には山や川ができ、天には星がかがやいた。
〈003〉
圖出榮河、書露洛川。
図や書が川から現れた。
〈004〉
偉哉庖犧、俯仰克宣。
伏羲が天地を観察して書契を造った。
〈005〉
爻建卦列、繩迂契便。
易の卦がくふうされ、結縄などもあった。
〈006〉
六制丕備、九德洽聞。
六書によって文字が整備され、
九つの徳について広く知られるようになった。
〈007〉
神農禾穗、軒轅慶雲。
(漢字のさまざまな書体として)神農は禾穂書、
軒轅(=黄帝)は雲書を作った。
〈008〉
科斗顓頊、仙人嚳君。
科斗書が顓頊によって、
仙人書が帝嚳によって作られた。
〈009〉
鳳興玄囂、龜起放勳。
鸞鳳書は玄囂のころに、
亀書は放勲(=堯)のころにできた。
〈010〉
禹帝鐘鼎、遍勒勞勤。
禹帝が作らせた鐘鼎には、あらゆる事跡が記録された。
〈011〉
侯岡鳥跡、恍劾妖氛。
侯岡(=蒼頡)が鳥の足跡にヒントを得て発明した文字は、
奇怪な邪説を糾した。
〈012〉
父乙徴虞、仲作驗殷。
父乙尊彝の銘文によって有虞氏(=帝舜)の時代が、
仲作辛鼎の銘文によって殷代のことが分かる。
〈013〉
或載丘索、若盈典墳。
「丘索」や「典墳」と呼ばれる書物ができた。
【二】
周(前1100?~)および戦国時代(前403~前221)
〈014〉
煥然彼周、郁乎維文。
輝ける周王朝が、繁栄する文明を開いた。
〈015〉
赤爵宿戸、鸑鷟唳岐。
赤雀が(周の文王の)いえに止まり、
鸑鷟(という瑞鳥)が岐山で鳴く、
というめでたいできごとがあった。
〈016〉
佚狀禎祥、發開鴻基。
史佚が瑞祥にかたどった書体をつくり、
発(=周の武王)が大事業の基礎をひらいた。
〈017〉
旦撰爾雅、保益攸司。
周公旦が『爾雅』をまとめ、保氏が文字を教育に役立てた。
〈018〉
殳職伯子、塡掌媒氏。
殳書は伯氏が担当し、塡書は媒氏が受け持った。
〈019〉
銘存寶和、功在尊彝。
銘文が宝和鐘にしるされ、功績が龔伯尊彝などに記録された。
〈020〉
衆工允釐、庶績咸煕。
多くの役人をまとめ、もろもろの仕事が盛んになった。
〈021〉
尼聖緣飾、旌延陵碑。
尼聖(=孔子)のみごとな篆文は、延陵碑に見ることができる。
〈022〉
門弟麒麟、紀俊喆萎。
(孔子の)弟子による麒麟書は、孔子が失望したことを記録した。
〈023〉
戰國殊軌、款識用私。
戦国時代は国ごとに車の規格が異なり、
文字も国ごとにばらばらで統一されていなかった。
【三】
秦代(前221~前206)
〈024〉
大孕小篆、籀産李斯。
大篆から小篆が生まれ、史籀は李斯を産んだ。
〈025〉
獵碣幸脫、玉璽須窺。
(大篆の例としては)石鼓文が幸いに伝わり、
(また)玉璽に見ることができる。
〈026〉
八分卽楷、次中所垂。
八分は「楷書」とも呼ばれ、王次中が作ったものだ。
〈027〉
徒隷謂佐、程邈始之。
徒隷の書は「佐書」ともいい、程邈から始まる。
〈028〉
爰歷高稿、博學敬爲。
『爰歴篇』は趙高、『博学篇』は胡母敬がつくった。
〈029〉
嬴政雖暴、簡牘頗資。
嬴政(=秦の始皇帝)は暴虐であったが、
文字の統一には貢献した。