『書史千字文』全文 原文と現代語訳 第2回 漢代から晋代まで 〈030〉〜〈063〉

伊藤文生氏(書文化研究会)による
新連載「『書史千字文』を読む」が始まります(2024年2月から連載開始)。
江戸時代に陸島立誠なる人物によって書かれた『書史千字文』は、

中国書道史を千字文にまとめたもの。
連載では、4字1句からなる原文を2句ずつ読み解いていきますが、

連載開始の前に、まずは全体をざっとご紹介。
ウサギの年にちなみ兎も角、読んでみましょう。

伊藤文生氏(書文化研究会)による新連載「『書史千字文』を読む」が始まります(2024年2月から連載開始)。
江戸時代に陸島立誠なる人物によって書かれた『書史千字文』は、中国書道史を千字文にまとめたもの。
連載では、4字1句からなる原文を2句ずつ読み解いていきますが、連載開始の前に、まずは全体をざっとご紹介。
ウサギの年にちなみ兎も角、読んでみましょう。

【四】
漢代(前206~8・25~220)

〈030〉
蕭何額殿、漢署昉茲。
蕭ショウ何カが未央宮の額を書いてから、漢の署ショ書ショがはじまった。

〈031〉
摩騰駄馬、梵字肇移。
迦カ葉ショウ摩マ騰トウが馬の背に載せて、梵ボン字ジが中国に伝えられた。

〈032〉
游製急就、奔逸從宜。
史シ游ユウが『急キュウ就シュウ篇ヘン』をつくり、漢字が手早く書けるようになった。

〈033〉
邕述飛帛、泥役示奇。
蔡サイ邕ヨウが飛ヒ白ハクをつくるには、役人が帚で書いた字が奇縁となった。

〈034〉
田蚡盤盂、孔甲孑遺。
田デン蚡プンが学んだ『盤バン盂ウ』は、(黄帝の史である)孔コウ甲コウの遺著。

〈035〉
曹喜薤葉、務翁箴規。
曹ソウ喜キが作ったという薤カイ葉ヨウ書ショは、仙人の務ム光コウの倒トウ薤カイ書ショを改めたもの。

〈036〉
行狎魁昇、今草最芝。
行ギョウ狎コウ書ショは劉リュウ徳トク昇ショウが先駆けであり、今キン草ソウ書ショは張チョウ芝シが最上である。

〈037〉
驚座名遵、售酒姓師。
座を驚かせた陳チン遵ジュン、酒を売り上げた師シ宜ギ官カン。

〈038〉
崔杜竝騎、暉襲交馳。
崔サイ瑗エンと杜ト度ド、羅ラ暉キと趙チョウ襲シュウとが並走した。

〈039〉
甄豐改定、許愼部居。
(漢字は)甄シン豊ポウが改定し、許キョ慎シンが部立てして整理した。

〈040〉
訓纂楊雄、滂熹孟堅。
『訓クン纂サン篇ヘン』は楊ヨウ雄ユウが、『滂ボウ熹キ篇ヘン』は班ハン固コがまとめた。

〈041〉
一賈序卷、三倉目篇。
賈カ魴ホウが字書を編集し、「三サン倉ソウ」と称した。

〈042〉
亮瞻蜀傑、象邵呉賢。
諸ショ葛カツ亮リョウ・諸ショ葛カツ瞻センは蜀ショクの傑物であり、
皇オウ象ショウ・賀ガ邵ショウは呉ゴの賢者である。

【五】
三国時代(220~265)

〈043〉
阿瞞寡儔、邯鄲重傳。
阿ア瞞マン(=曹ソウ操ソウ)に匹敵するような人は滅多になく、
邯カン鄲タン淳ジュンは古文を伝えた。

〈044〉
鵠竊柎進、誕畫榜怕。
梁リョウ鵠コクは(師シ宜ギ官カンが字を書いた)板を盗み見て上達し、
韋イ誕タンは扁額に書く際に恐ろしい目にあった。

〈045〉
鍾繇特達、雕琢勉旃。
鍾ショウ繇ヨウが特に上達できたのは、努力の成果。

〈046〉
臥寢穿被、如厠忘歸。
(鍾繇は)寝床に臥しても掛け布団に穴をあけるほど、
厠に行っても帰ることを忘れるほど(習字に励んだ)。

〈047〉
士季敏慧、細微殫研。
士シ季キ(=鍾ショウ会カイ)はかしこく、
こまかなことまできわめてくわしい。

〈048〉
贋欺勖劍、擬摧艾權。
(鍾会は)贋にせの手紙を書いて荀ジュン勖キョクの宝剣をだまし取り、
文書を書き換えて鄧トウ艾ガイを落とし入れた。

【六】
晋代(265~317・317~420)

〈049〉
炎技峭徤、不慙受禪。
司シ馬バ炎エンの技法は剛健で、いかにも天子らしい書だ。

〈050〉
睿蹤強勇、堪主東遷。
司シ馬バ睿エイの筆跡は強く勇ましく、東晋の君主の書だ。

〈051〉
機掩弘才、預揭家聲。
陸リク機キは文人としての大きな才能におおわれて(書家としての名声は目立たず)、
杜ト預ヨは一家の名声を高めた。

〈052〉
靖類蠆尾、珉度騮前。
索サク靖セイ(の書)は蠆さそりの尾のようで、
王オウ珉ビン(の書)は名馬の前を驢馬で通り過ぎるようだ。

〈053〉
侃未雍滯、康任自然。
陶トウ侃カンは運筆に停滞がなく、嵇ケイ康コウの筆法は自然のまま。

〈054〉
郗伊愔秀、謝尤安鮮。
郗チ氏では愔インがひいでており、謝シャ氏では安アンがすぐれている。

〈055〉
瓘藁宗朴、恒散專姸。
衛エイ瓘カンの藁コウ草ソウ書ショは質朴を根本とし、
衛エイ恒コウの散サン隷レイ書ショは妍美を専一とする。

〈056〉
粤有右軍、擅領管城。
ここに右ユウ軍グンすなわち王オウ羲ギ之シがあらわれ、筆を自在にふるった。

〈057〉
愍姥利扇、好鵝換經。
(王羲之は)老婆をあわれみ扇でもうけさせ、
鵞鳥が好きで『道ドウ徳トク経キョウ』と交換した。

〈058〉
幼遇鑠歎、壯服翼爭。
幼いころ衛エイ鑠シャクを嘆かせ、壮年になると庾ユ翼ヨクを承服させた。

〈059〉
野鶩誚滅、跳龍喩亨。
「野生の鶩あひる」とする非難は消え、
「おどりあがる龍のよう」と比喩された。

〈060〉
乾坤感我、虛空讚卿。
(王羲之の書は)天地を感動させ、虚空を讃歎させた。

〈061〉
風認樂毅、芬留蘭亭。
(王羲之の書の)風格は楽ガッ毅キ論ロンに認められ、
蘭ラン亭テイ序ジョの評判は今も変わらない。

〈062〉
入室七郞、升堂四兄。
奥義に達した王オウ献ケン之シ、
それに準ずる四人の兄たち(凝ギョウ之シ・操ソウ之シ・徽キ之シ・渙カン之シ)。

〈063〉
薈廞企閫、濛脩逮閎。
王オウ薈ワイ・王オウ廞キンは(王羲之の)門をのぞみ、
王オウ濛モウ・王オウ脩シュウは(王羲之の)門におよんだ。

『書史千字文』版本より
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