心太平本黄庭経(しんたいへいぼんこうていきょう)
356年(東晋・永和12年)
王羲之の小楷の第一に挙げられる。巻末に「永和十二年」とあり、王羲之50歳頃の作とされる。種々の刻本が伝来する。影印本などで一般に見られるものは「水痕本」と称される系統で、10行目に損痕があり、また16行目末に「無事脩󠄁太平」とある。ここに示した『黄庭経』は、一般に「心太平本」と称される。「水痕」も無く16行目を「無事心太平」に作る。この系統の刻本は非常に少ない。
「心太平本」の最も有名な拓に、趙孟頫旧蔵本がある。ここに示した「心太平本」は、この趙孟頫旧蔵本と書風、字画がほぼ同じである。しかし、同一の拓本ではなく、別本である。趙孟頫旧蔵本は天下の名品とされるものであるが、この「心太平本」と比較すると、字画がやや軽く弱い。この「心太平本」は、堂々たる力強さを秘めている。
(木雞室蔵併記)