ブックレビュー 三浦しをん著『墨のゆらめき』(新潮社)

三浦しをん著『墨のゆらめき』
四六判変型 232頁
新潮社 2023年5月刊
定価=本体1600円+税

 都内の老舗ホテルに勤務する続力(つづきちから)と、そのホテルの筆耕の仕事を請け負う書家の遠田薫との交流をもとに、物語が進んでいく。書道関係者(愛好家)としては、書家や書をどのように書いてあるのかが興味深いところ。
 老舗ホテルでは、未だ招待状の宛名書きをプロの筆耕に依頼しているのか、しかも何人もの筆耕士や書家が見本を登録して、依頼者に書風を選んでもらうことまでするのか、と驚いたり、書家の遠田さんのファッションは、やはり定番の作務衣姿なんだな、などと突っ込みながら読み進める。これ以上はネタばらしになるので遠慮するが、書作品を書く場面や、その他書道に関連する部分は、欅 隆雪氏(大東文化大学書道科卒の書家、ペンネーム御國 燦)が監修を務めているので、違和感なく読み進められる。読書の秋に、ご一読をお勧めしたい。

(f)

◉新潮社 関連ページ
 https://www.shinchosha.co.jp/book/454108/

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