ブックレビュー 『織田信長文書の世界 永青文庫 珠玉の六〇通』(勉誠社)

公営財団法人永青文庫/熊本大学永青文庫研究センター編
『織田信長文書の世界 永青文庫 珠玉の六〇通』
B5判 272頁
勉誠社 2024年10月刊
定価=本体2,800円+税

 永青文庫には「細川家文書」が多数収蔵されている。「細川家文書」とは、大名細川家伝来の歴史資料であり、その中に59通の織田信長の手紙があることはよく知られていた。2022年、細川家文書の中からさらに信長の手紙1通が発見され、ニュースにもなった。
 本書は、その新発見の1通を加えた信長の手紙60通と、細川藤孝、明智光秀、豊臣秀吉などの文書も含めた全76点をカラーで掲載。それぞれに釈文、現代語訳、解説を付した歴史ファン必読の1冊である。
 当時は手紙は右筆が書くことになっていたので、筆跡から人物像を描くことは難しいが、信長から明智光秀、そして豊臣秀吉へと権力が移りゆく激動の時代に、誰が、誰に、いつ、どのような内容の手紙を送ったかを眺めていくのは興味深い。さらに、織田信長本人が書いたことが確認できる「織田信長自筆感状」の存在によって、見るものそれぞれが信長像を思い描くことができるに違いない。

 なお、12月1日まで永青文庫で「信長の手紙─珠玉の60通大公開─」展が開催されているが、本書はその図録としても販売されている。

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◉目次より
総論 珠玉の六〇通──織田信長文書の魅力
Ⅰ 永青文庫細川家の新発見文書と自筆文書
Ⅱ 「室町幕府」をどうする?──信長・藤孝・義昭
Ⅲ 一揆との戦と「長篠合戦」──信長の戦争と諸将
Ⅳ  信長と藤孝、そして村重──奉仕と謀反のあいだ
Ⅴ 光秀の台頭から「本能寺の変」へ──信長・光秀・藤孝
Ⅵ 未完の「天下」を引き継ぐ者──秀吉と細川家
Ⅶ 肥後細川家と信長文書──熊本への収集

◉執筆者
稲葉継陽、山田貴司、伊藤千尋、増田孝、水野嶺、金子拓、天野忠幸、村井祐樹、林千寿、福島克彦、林晃弘、有木芳隆、髙島晶彦

◉永青文庫ホームページ
https://www.eiseibunko.com

◉勉誠社ホームページ
https://bensei.jp

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