ブックレビュー 石川九楊著『書とはどういう芸術か 筆蝕の美学 増補版』(中公新書)

石川九楊著
『書とはどういう芸術か 筆蝕の美学 増補版』
新書判 272頁
中央公論社 2025年3月刊
定価=本体1,000円+税

 本書は、1994年12月の初版以来、30年間で13版を重ねたロングセラー『書とはどういう芸術か 筆蝕の美学』を大幅に改稿し、新章「現代の作家の書」を収録した増補版である。
 初版以来30年の時を経て、石川九楊氏の「筆蝕の美学」という書論は、洗練され、整理され、強靭になってここに決定版という形で帰着した。
 「書とはどういう芸術か」という問いに、体系だった理論で答える書籍は他に見当たらない。「書」に少しでも関わる方、興味のある方にとっての必読書である。すでに旧版を読んだという方も、ほぼ全ページにわたって手が入っているので、新たな1冊として楽しめるだろう。
 以下に、増補版のあとがきより一部を引用しておく。

 いまなお多くの人々が、書といえば、子供や女性を中心とする習字やその延長線上の書道展を想起する。だが、書が文字=文とともに生まれ、ともに存在しつづける東アジア漢字文明圏にあっては、書こそが文明や文化の中心かつ根底に横たわっている。そのことに気づき、書を再生させることこそが、文明文化の再興へとつながる。その意味で、ワープロ=パソコン作文全盛、AI熱に浮かれたいまこそ、真正面から読まれたいと願い、また本書上梓の価値も存在すると信じている。

(f)

◉目次(章立てのみ抜粋)
序章 書はどのようなものと考えられてきたか
第一章 書は筆蝕の芸術である―書の美はどのような構造で成立するか
第二章 書は紙・筆・墨の芸術である―書の美の価値はなぜ生じるのか
第三章 書は言葉の芸術である―書は何を表現するのか
第四章 書は現在の芸術でありうるだろうか―書の再生について
第五章 現代の作家の書

◉中央公論社 関連ページ
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2025/03/102849.html

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次