奈良市出身の書家、今井凌雪(1922~2011)の生誕100年に合わせて開館したセミナーギャラリーについて、その存在は知りつつも具体的なことを知らないままであったが、この度機会を得て、伊藤滋氏らとともに訪問し、作品や収蔵品の鑑賞を体験した。その様子をレポートする。

今井凌雪セミナーギャラリー訪問レポート

今井凌雪は、中谷釜雙・辻本史邑に師事。日展文部大臣賞、日本芸術院賞ほかを受賞。筑波大学、大東文化大学の教授を務めた。書法研究雪心会を主宰。中国語に堪能で中国の書法家とも交流した。このセミナーギャラリーは、今井凌雪の旧宅を一部改築したものであるので、入り口、玄関、中庭、調度品など随所に今井凌雪の美意識が色濃く感じられる。


鑑賞にあたっての注意事項や帰りのバスの時刻などを聞いた
案内してくれたのは、雪心会の数名の方々。まず、セミナー室に案内され、そこで入館料500円を支払い、帰りのバスの時間の確認。セミナー室は10名ほどが集まれる会議室のような場所で、定期的にセミナーが開催されているとのこと。用意されていた白手袋をはめて、図書室へ。

図書室には、今井凌雪が蒐集した書に関する日中の書籍、資料、図録、拓本などが所狭しと並んでいる。事前に、伊藤滋氏とも相談の上、見たい拓本などをリクエストしておいたので、前もって準備してくださっていた。


今回は、伊藤氏同行ということもあって、蔵品の中でも特に価値の高いものが披露された。具体的な名はここでは特に記さないが、石鼓文の明拓から明清名家の作品まで真蹟6点、拓本4点を、ガラス越しではなく間近に鑑賞することのできた素晴らしい時間となった。


ギャラリーには、大小様々な遺作や、遺愛の陶磁器類などが配置されていて、作品の解説も係の方が熱心にしてくださった。側近くにいた人でないと分からないであろう作品制作の機微についてもお話しいただいて、作品がより身近に感じられた。

約2時間、清々しい空間を味わい、貴重な資料に接し、充実した奈良の秋の午後となった。せっかく奈良に来たのだからと、翌日は正倉院展を鑑賞、奈良公園を散策して鹿を愛で、満足して帰途についた。なお、平城宮跡「朱雀門」の題字は今井凌雪の筆による。セミナーギャラリーへお越しのついでにご覧になってはいかがだろう。

訪問時に留意すること
さて、これから訪れようと思っている方々のために、実際に訪問してみて感じたことをいくつか記しておきたい。
●交通の便が良くないので、奈良駅からバスかタクシー(3000円程度だった)を利用することになる。バスを利用する場合、本数が少ないので事前の確認を忘れずに。関西圏の方は、車の利用も可能だが専用の駐車場はない。
●開館日と時間が制限されているので、事前の確認をお忘れなく。予約制なので必ず電話を入れて、事前に人数などを連絡しておくこと。相談によっては開館日を勘案してくれる可能性ありかも?
●セミナー室はせいぜい10数名が入れる広さなので、大人数での訪問は控えたい。
●閲覧したい書籍や資料、収蔵品など、目的が決まっている場合は、予約時にその旨を伝えておくようにしたい。特に何が見たいということがなければ、例えば漢代の隷書、明清の真蹟くらいのカテゴリーを伝えておくと、勘案して準備しておいてくれるはず。
●貴重な品々に触れるので、マスク、手袋(今回は備品を拝借した)、断りなく触らないなどのエチケットは守ること。
●今井凌雪に関することを何でも積極的に聞いてみるのも良い。館のどなたも喜んで、いろいろなエピソードを話してくれるはずだ。
(f)
今井凌雪セミナーギャラリー
◎所在地 〒630-8431 奈良県奈良市窪之庄町125-1
◎交通 JR・近鉄奈良駅発、天理駅方面行き「窪之庄」下車、徒歩2分
◎開館日 毎週火曜・水曜日、セミナー開催日
◎開館時間 13:00~16:00
◎入館料 500円
◎予約・問い合わせ 書法研究雪心会 電話:0742-64-0192 FAX:0742-64-0092
◎今井凌雪セミナーギャラリーホームページ
https://sessinkai.jp/
今井凌雪セミナーギャラリー
◎所在地
〒630-8431 奈良県奈良市窪之庄町125-1
◎交通
JR・近鉄奈良駅発、天理駅方面行き「窪之庄」下車、徒歩2分
◎開館日
毎週火曜・水曜日、セミナー開催日
◎開館時間
13:00~16:00
◎入館料
500円
◎予約・問い合わせ
書法研究雪心会
電話:0742-64-0192 FAX:0742-64-0092
◎今井凌雪セミナーギャラリーホームページ
https://sessinkai.jp/