ほんとうの書道初心者しか、見ないでください!
「子どものときに筆を持ったきり」という方、大歓迎。
みなさんと墨や筆の縁を再びつなぐための、手ならい講座です。
特別編 書き初めをしよう
みなさま、明けましておめでとうございます。
案内役の古志庵(こしあん)です。
今回は新年の特別編。
1月2日の「書き初めの日」にちなみ、筆を持ってみましょう。
書き初めの由来

東京国立博物館蔵
書き初めは「吉書の奏」という宮中の儀式から派生し、庶民に広まった行事のひとつ。
新年に井戸で初めて汲んだ「若水(わかみず)」を神に供え、その水で墨を磨り、恵方を向いて書く習慣が今に伝わります。
暮らしや教育と結びついて、日本の書道文化を支えてきました。
しかし近年、学校教育の場でも筆を持つ時間が減り、暮らしの中からも消えつつあります。
昔は学校の先生が筆で名前の手本を書いてくれることもありましたが、今はその時間も人材も少ないようです。
書道教室をしていると確実に書道離れが進んだと実感します。
書き初め文化のユネスコ登録!
書道界は昨今の書き初めをはじめとする日本の書道文化の衰退を危惧し、ユネスコ無形文化遺産に「書道」を登録するべく2015年より活動を行ってきました(日本書道ユネスコ登録推進協議会)。
今年(2026年)はユネスコ無形文化遺産の登録審議がされる見込みというところまで来ました。
書道界にとって記念の年になりそうな2026年のはじまりに、健筆を願って1人で集中するも良し、家族や友人とワイワイ書くのも良し。
さぁ、楽しい書き初めの始まりです!
墨を磨る
この講座では液体の墨を使うのではなく、硯と墨を使っています。
墨の磨り方は第2回で取り上げていますのでそちらをご覧ください。
液体の墨しかないという方は、墨がこぼれないように少し深さのある容器を硯代わりに使います。
墨を磨る水は水道水でかまいませんが、「若水」を用意できる人はぜひ使ってくださいね。
余談ですが、今でも子どもたちの1月の書道の課題には「若水」(「わか水」と表記する場合も)と書く習わしがあり、意味を知らない子どもたちは「わかめの入った水のこと?」などと聞いてきます。

若水には邪気を払う力があるそう
書き初めの紙
半紙に1字を大きく書いたり、つなげて長い紙にするのもよいでしょう。
大手100円ショップには「八つ切(やつぎり)」(約17.5cm×68cm)の書き初め用紙の取り扱いがあるようです。
書道の紙には「全紙(ぜんし)」と呼ばれる約70cm×136cmの基本の紙があり、それを縦半分にしたものを「半切(はんせつ)」(約35cm×136cm)、8等分にした紙が「八つ切」です。
八つ切は、半紙の下敷きの上に横幅が収まるため、気軽にチャレンジできるサイズです。
書道用品を取り扱う専門店には、もちろん大小さまざまなサイズの紙がありますよ。
書く言葉
書き初めはあまり難しく考えず、筆を大きく動かして、お好きな言葉を書いてください。
とは言っても、忌み言葉や暗くなるような文言は避けたいところ。
思いつく言葉を列挙してみます。
●1字
「寿」「楽」「幸」「実」「豊」「福」「春」「新」「永」「恵」「馬」
●2字
「初春」「朝日」「豊楽」「吉祥」「吉事」「福寿」「飛翔」「平安」「長寿」「安寧」
縦長の紙では1字や2字だと間が持たない場合がありますので、半紙向きの言葉です。
四字熟語は「順風満帆」「新春万福」「千客万来」「福徳円満」など、ご自身の気持ちや願いを表すのに適した言葉を探してみましょう。
こんな言葉もあり!?
漢字だけでなく、平がなやカタカナ、アルファベットが入っても楽しい書になります。
これといって書きたい言葉が思いつかない人は、自分の名前の1字、好きな曲のタイトル、好きな食べ物、画数の多い字など、テーマを設けてみてください。
みんなで書き初めをするときはテーマがあると盛り上がります。

アームカバーやエプロンで墨はね対策をすると安心
伝統的な書き初めの言葉
江戸時代の教科書である往来物(おうらいもの)には、平安時代の漢詩人・慶滋保胤(よししげのやすたね)が詠った不老長寿の漢詩が掲載され、書き初めにもよく書かれたそうです。
●慶滋保胤の漢詩
「長生殿裏春秋富 不老門前日月遅」
(長生殿の裏には春秋富めり、不老門の前には日月遅し)
また、国歌「君が代」のもとになった『古今和歌集』掲載の和歌も題材とされました。
●『古今和歌集』読み人知らずの歌
「わがきみは千代にやちよにさざれ石のいはほとなりてこけのむすまで」
上の2つは、平安時代に編まれた『和漢朗詠集』の「祝」の項に採録されていて、昔から祝い事の席で郎じられた歌だったようです。
難しい課題ですが、チャレンジしてみてはいかがでしょう。
初夢に願いをこめる
正月の縁起物のひとつで、よい初夢を見るために宝船の絵を敷いて寝る風習がありました。
宝船の絵とともに書かれた和歌が少し変わっているのでご紹介します。
長き夜の 遠の眠りの 皆目覚め 波乗り船の 音の良きかな
この歌を平がなに直すと、
なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな
と回文になっています。
筆で書いて枕の下に敷いて寝たら、よい夢が見られるかもしれませんよ。
小学生の作品を参考に
そろそろ頭の中に書きたい言葉が浮かんできたでしょうか。
参考までに、八つ切に書いた小学生の書き初めをご紹介します。

小5の知沙さんは左利き。
右上がりの線を書くのは難しいと言います。
筆を押し込むように動かし、粘りのある強い線を引けました。
学生の書き初めではフルネームを書くことが多く、●●には苗字を入れていますが、みなさんは名前だけでかまいません。

小3の瑚々さんは書き初め初挑戦でした。
堂々と筆を動かし、「来」の縦画は気持ちよさそうな線です。
書く言葉は「春が来た」のような文章でも素敵に仕上がりそうです。
書いたら貼ってみよう
書き初めは書いたあとは乾かして、ぜひ貼ってみてください。
机の上で見えていた姿と貼った状態では印象が異なり、別の視点で自分の書を確認してみましょう。
みんなで鑑賞会をすると盛り上がりますよ。
講座ではハネやハライなど部分練習していますが、好きな字を書いて思い切り筆を動かすことも大事。
気負いなく筆を持ったら伸びやかな線が引けるかも!?
書き終えたら片付けをします(片付け方法はこちらをご覧ください)。
みなさまのご健筆をお祈りして、特別編の締めといたします。
今年も筆との付き合いを楽しんでくださいね。
◉課題ができたかチェックしてみよう!
▢ 自分の好きな言葉が書けた
▢ 筆を持つ楽しさを感じた
▢ 片付けもきっちりできた
飾ってみるとなお良し!
貼って眺めたり、人の意見を聞くのも参考になりますよ。
次回をお楽しみに。